エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「ミスター・ハリンソン、こちらでもお目にかかれましたね」
どこかで聞いた声。見上げた顔には見覚えがなかった。とんでもなく美形な男性で、一度見たら忘れなさそうなのに。
「おや、コウタロウじゃないか。先日は世話になったね。君が案内してくれた、えーっとなんと言ったかな……」
「炉端焼きです」
「そう、その店が最高にクールだった。そのお礼に今度のパーティーでは私たちがしっかりもてなすよ。君が望んでいる通り、父にもちゃんと話してある」
「ありがとうございます。大変心強いです」
私を抜きにして、突然現れた男性とアリスの両親が盛り上がっている。この人一体誰なんだろう。モデルのように背が高いし、すごく美形だ。ただ者ではない気がする。
「彼女とお知り合いなのですか?」
「ああ。ハネダで迷子になったアリスを見つけてくれてね。彼女は我々の恩人なんだ。だからぜひともパーティーに招待したいと思ってね」
「それなら私が彼女をエスコートしてお連れしましょう」
「えっ?」
まだ行くとも返事をしていないのに。思わず声を上げると、滉太郎と呼ばれた彼と目が合った。断りませんよね?と視線が鋭く物語っていて、背筋がブルっとした。
「ニナ、来てくれるの? 楽しみにしてるね!」
アリスからも笑顔で言われては、行きたくないとは告げられない。お礼を言って、去っていくアリスたちに手を振った後、私は彼、滉太郎さんの顔を窺い見た。
「あ、あの……パーティーに参加って本当に?」
さっきまで愛想よく笑っていた滉太郎さんはスッと笑顔をしまって仏頂面になった。