エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「君が滉太郎に執着する理由は金だろう? だが、駐在員は我が国の代表だ。その妻にも相応の品位が求められる。君のような品性に欠ける女性には荷が重いと思うがね」

 あまりに手厳しい言い様。さすがにちょっとムッとした。いくら相手が社会的地位のある人物であっても、初対面の人にここまで罵られる謂れはないはずだ。

「確かに滉太郎さんには父の治療費を支払っていただいています。でも今後は私が医療ローンを借りて、弟と協力しながら支払っていくつもりです。滉太郎さんには負担をかけないとお約束します」

「到底信用できないな。君は過去にも交際していた男性から借金をしていたじゃないか」

 黒崎さんの口から告げられたのは、高校時代の元彼の名前だった。どうして知っているの? でも私は彼にお金を借りたことは一度もない。デートでファーストフードを奢ってもらったことはあった気がするけれど、お返しに私もコンビニでジュースやお菓子を買って渡していた。

「なにかの間違いです。私はそのようなことはしていません」

 反論したが、黒崎さんは「裏は取れているんだよ。本人がそう証言していた」と言って微笑むだけで取り合ってくれない。

「そんな……」

 顔から血の気が引いていく。

 明らかに誤解だが、それを証明できない。黒崎さんは私を金の亡者だと思い込んでいる。

「私は君を滉太郎の妻とは認めない。滉太郎の妻に相応しいのはさくらくんだ。さくらくんも、滉太郎との結婚を了承してくれている」

 黒崎さんから目配せされて、さくらさんが緊張の面持ちでうなずいた。
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