エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「偽装結婚って言ってもさ、あんなイケメンと一緒に住んでなにもないわけないでしょ。仁奈も満更じゃなさそうだったし。だから邪魔してやったの。黒崎さんのことを調べて、父親の黒崎議員に告発状を送りつけた。向こうも仁奈が黒崎さんに付きまとうのを許せないみたいだったから、利害の一致で協力してたの」

「もしかして、私が高校時代の彼氏に借金をしてたって話も……」

「ああ。私がそいつを買収して証言させたの。だって黒崎さんと別れさせる証拠を掴みたかったのに、仁奈ったらなかなかボロ出さないんだもん。探偵まで雇って調べたのにさ」

 独立していたはずの点と点が線でつながり、異様な絵が出来上がっていく。

 今、隣に座っているのは本当に千穂なんだろうか。別の誰かが巧妙な変装をしてこの場にいると思った方が現実味がある。

「嘘だよね。千穂が、そんなことするはず」

「ないって? バカじゃないの? 言っとくけど私、ずっと仁奈のこと嫌いだった」

 キライ。言葉の意味をすぐに理解できなかった。

「最初は友達だと思ってたよ。でも一緒にいるのがだんだん苦しくなってきた。みんな、私を仁奈と比較する。お母さんは私が文句言ったらすぐ、『仁奈ちゃんはお母さんがいない中、家のことを頑張ってやってるのに』って。高校の担任やゼミの教授も同じ。『野々村さんは家族の世話をしながらこんなに良い成績を取ってるから、おまえも頑張れ』ってさ。みんな、仁奈、仁奈、仁奈。春樹も言ってた、私より仁奈の方が顔かわいいって」

 千穂が忌々しそうに吐き捨てる。

 私は奥歯をギュッと噛み締めた。
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