エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 大切な友人だと思っていたのは私だけだった。友人どころか嫌がらせをするほど嫌われていた。ショックが濁流のように押し寄せて、溺れた私は声がうまく出せない。

「どうして……そんなに嫌いなら、どうして今まで私と仲良くしていたの?」

 それでもなんとか絞り出した。嫌い、と口にして胸がズキンと痛む。

 千穂は私の気持ちごとあざ笑うように目を細めた。

「高校でさぁ、私の方が先に彼氏ができたでしょ? やっと仁奈に勝てたのが、すごく嬉しかったんだよね。その時の快感が忘れられなくて、仁奈を見下す材料が欲しくて一緒にいた」

 カッと怒りが押し寄せて私は立ち上がった。反動で、カウンターチェアが床を削るような音がした。

「ひどい」

 私が睨みつけても千穂は笑みを浮かべたまま。

「話したことはデタラメだって、滉太郎さんのお父さんにちゃんと説明して。あなたのせいで私は」

「そんなの必要ないよ。仁奈にはもうすぐ日本からいなくなってもらうから」

「なに言ってるの?」

「仁奈の身辺調査で雇った探偵料、結構高かったんだよね。そのせいで今月のホストのツケがちょっと支払い厳しいから、仁奈に稼いできてほしいんだ。大丈夫、今、外国に出稼ぎ行くのって流行ってるらしいから」

「ふ、ふざけないで!」

 なんの出稼ぎかは知らないけれども、そもそも私が千穂のツケ分を働いて返す理由なんてない。

 ここまでバカにされているかと思うと悔しくて、そのまま帰ろうとした。

「今、迎えが来るから待っててよ。こわーい人たちが来るから、このまま帰ったら怒ると思うよ。もしかしたら仁奈の家族も危ない目に合うかも」
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