エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「家庭の事情で海外旅行は行ったことがなくて。語学は大学の専攻が英文学科だったのでそれで勉強していて」

「日本でそれだけ学べるなら大したものだ」

 感心したようにうなずきながら、黒崎さんはクロテッドクリームといちごジャムをたっぷり挟んだスコーンを優雅に口に運んだ。指が長いから、なんてことない動作も様になる。

「でもなおさら悪かったな。初めてのイギリス旅行を一日潰して」

「いえ。絶対に行きたいと思っていたところは行けましたし、子爵のパーティーに参加させていただける機会なんてそうそうないですから」

「そう言ってもらえるとありがたいな」

 頬杖をついて微笑む黒崎さんはやっぱりモデルみたいにスマートで、かっこいいなと思った。知らないうちに眼鏡をかけなおしているけれど、その美貌は損なわれていない。

「そういえば黒崎さんって目は悪くないんですよね? どうして眼鏡をかけてらっしゃるんですか?」

「顔をある程度隠しておかないと知らない女性に声をかけられて煩わしいからな」

「な、なるほど」

 イケメンはイケメンゆえの気苦労があるらしい。

 紅茶をしっかり二杯飲み終えた後、黒崎さんにお願いしてお土産を買うことにした。自分用と、千穂の分。千穂は大丈夫かな。熱、下がっているといいけど。

「俺の母親もここの紅茶が好きで、出張に行ったら絶対買ってこいって言われてるよ」

 イギリス限定だというフレーバーを手に取りながら、黒崎さんが苦笑する。

「女性は紅茶好きな方が多いですよね。私もこれは友達と自分の分です。父と弟は紅茶を飲まなくて」

「俺とは逆だな」
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