エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 調子に乗って紅茶を山ほどカゴに入れ、お土産の代金まで支払おうとする黒崎さんをなんとか止めて自分で支払い、買ったお土産は宅配便で送る手配をした。
 
 一度ホテルに戻って着替えを済まし、黒崎さんが予約をしたサロンでメイクと髪型を整えてもらい、いざ会場へ。

 パーティーは、ロンドンでも有名なプライベート会員クラブのボールルームで開催され、ペンブリッジ子爵が主催したチャリティ財団の設立十周年を祝うものらしい。

 受付をすると、まず最初に控え室に通された。そこにはアリスと彼女の母親がいた。アリスはパーティーには参加しないが、私に会うために会場まで来てくれたみたい。アリスのかわいらしさに、私の緊張はすぐさま解けた。

 アリスの話を聞いているうちにパーティーが始まる時間になり、名残惜しさを感じながらボールルームへ向かう。

 きらびやかなシャンデリアの下、ロンドンの紳士淑女が集う様子にまた緊張がぶり返す。私みたいな一般人は絶対浮いているはずだ。

「固くなる必要ないさ。今日のパーティーは政治色が強くないし、ニコニコ笑ってたらそれでいいから」

 ガチガチな私を見て、黒崎さんが笑いを押し殺している。

「黒崎さんはこういった場所に慣れてるから緊張なんてしないでしょうけど……」

「俺も緊張してるよ」

「うそっ」

「嘘」

「嘘なんですか!」

「ハハッ、それくらいリラックスしてていいよ。じゃあ行こう」

 腰に手を回され、心臓がトクンと跳ねる。男の人にこんなに近づくことはほぼ初めてだ。父や弟の亮介とも体が触れ合う距離感で歩くことはない。
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