エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 隣に黒崎さんがいることを変に意識してしまっているせいか、体温まで上昇してくる。今、私の顔は真っ赤になっているだろう。お酒も飲んでいないのに。

 空港で出会ったペンブリッジ子爵の息子であるミスター・ハリンソンを見つけて挨拶すると、彼は私たちを父親であるペンブリッジ子爵に引き合わせてくれた。

「おおっ、君がニナか! 息子から話は聞いているよ。私のかわいい孫娘を助けてくれて、本当にありがとう。今日はささやかな集まりだが、存分に楽しんでいってくれたまえ」

 イギリス貴族院議員と聞いて緊張していたけれど、ペンブリッジ子爵は私の手を握って気さくに微笑む。私も肩の力が抜けて招待してくれたお礼を言うことができた。

「ペンブリッジ子爵、初めまして。黒崎滉太郎と申します」

「君がコウタロウか。優秀な外交官と話に聞いているよ。クロサキ議員の息子でもあるんだろう? 彼とは英日合同会議で何度か会ったことがある」

「はい、父からその節はお世話になったと言伝を預かっております」

「ああ。それにしてもアリスを助けてくれたのが、君のパートナーだったとは驚いたよ。やはり彼女は素晴らしい女性だね」

「はい、私の自慢の恋人です」

「えっ?」

 私たち、そんな設定だったっけ? 黒崎さんの顔を窺い見ると、腰を強く引き寄せられた。

「すまないが協力してくれ」

 小声でそう囁かれて、心臓が口から飛び出るかと思った。

 ドキドキしてなにも言えない私をよそに、ふたりは和やかに会話をしている。
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