エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「随分顔がいいから、てっきりプレイボーイなのかと思ったが、誠実そうでなによりだよ。今度、日本に行ったら私もアテンドしてほしい。ロバタヤキ、だったか? そこが絶品だったと息子が言っていた」

「はい、是非に。よろしければその前に、ロンドンでも日本食を味わえるようなイベントを開催できればと検討しているのですが……」

 話題が外交に関わる内容になってきたところで、黒崎さんの拘束から解放され、私は子爵夫人とお話をさせてもらった。夫人も小説をよく読むらしく、おかげで話題に事欠かなかった。

 夫人や、戻ってきた黒崎さんから他の参加者を紹介してもらったり、黒崎さんとフィンガーフードを楽しんだりしているうちに、パーティーは終わりを迎えた。

 最初はどうなることかと思ったけれど、思いのほか楽しめてよかった。でも終わってみると疲労感が押し寄せてきて、帰りのタクシーの中で私は小さくため息をついた。

「今日は助かったよ。おかげで俺も子爵と良い話ができた」

 隣に座る黒崎さんが足を組みながら機嫌よさそうに言った。

「それはよかったです。というか黒崎さんのお父様って、あの黒崎純一さんなんですか?」

 黒崎純一といえば、現内閣で厚生労働大臣を務める国会議員だ。彼の父親は過去に内閣総理大臣のポストについていて、黒崎議員も次期総理大臣候補のひとりとワイドショーでうわさされている。

 その息子と、偶然とはいえ一緒にパーティーに参加していたなんて。恐れ多くて身震いする。
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