エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「黒崎さん、ありがとうございます。父を元気づけてくださって」

 帰りのタクシーで、私は隣に座る黒崎さんに向かって頭を下げた。

 結婚式に参列するなら元気にならないといけないと言って、お父さんはついに手術を決意してくれた。黒崎さんが結婚の約束を口にしてくれたおかげだ。

「それが今日の俺の役目だからな。指輪はいつ買いに行く?」

「嘘なんですからそこまでしなくても」

「お父さんには結婚式をするって宣言したからな。このまま結婚した方がいいんじゃないか?」

「えっ?」

 ご飯に誘うときのような気軽な物言いに、私は口をポカンとさせて呆気に取られた。

「あ、あの、冗談ですよね?」

「そんな冗談、言う必要性がないだろ。もちろん本気だよ。もっとも実際に入籍すると俺も君も手続きが煩わしいから、結婚といっても偽装結婚だが」

「偽装結婚……」

 まるでドラマみたいだ。現実味のない話に私は何度も瞬きをした。
< 34 / 123 >

この作品をシェア

pagetop