エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 東條さんと滉太郎さんが周囲の人に向かって軽く頭を下げる。

「すみません、奥様の前で騒がしくしてしまって。自分の娘を嫁に出したいくらい、滉太郎はいい男なんですよ。ああ、外見だけでなく内面もね。私なんかに言われなくても、奥様はご存知だと思いますが」

 私は曖昧に笑った。

 東條さんの言う通り、滉太郎さんはいい人だ。サバサバしすぎている部分はあるけれど、誠実で優しい。

 でも出会って数ヶ月。偽者の妻でしかない私が、いかにもわかっていますという顔で頷くのは気が引けた。きっと東條さんやさくらさんは、私よりずっと滉太郎さんのことを知っているはず。

 当然のことなのに、なぜか胸がチクチクする。

「だから滉太郎がどんな女性を妻に選んだのかすごく興味があってね。今日お会いできるのを楽しみにしていたんですよ。こんなに綺麗な奥様で驚きました。滉太郎が羨ましいくらいだ」

 これはお世辞。だから私も気負いなく笑えた。

「これからもお幸せに。滉太郎、今度は仁奈さんと一緒にうちへ遊びに来てくれ」

「はい、ぜひ」

 滉太郎さんと一緒に会釈した後、さくらさんと目が合った。

「ご結婚おめでとうございます」

 さくらさんの声は震えていた。笑顔のまま、滉太郎さんを見つめている。口元は笑っているのに泣きそうで、少しでも触れたら崩れてしまいそうな笑顔。

 もしかして、さくらさんは……。
 私は、彼女から逃げるように目を逸らした。
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