エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「黒崎さんとはどうなの? その後」

 今日は約束していた千穂との飲みの日。始めに注文したビールがきてすぐに、千穂がそう尋ねた。

「どうって?」

「進展とかないの? 仁奈からデートに誘ったりとか」

「デートはないけど、一週間前に滉太郎さんのお供でパーティーには行ったよ」

「へぇ。いいねぇ、セレブで。そういうパーティーだと、黒崎さんって女の人に囲まれてたりするの? モテそうだよね」

「さすがに囲まれてはいないけど……滉太郎さんのことが好きなのかなっていう人はいた、かな……」

 切なげなさくらさんの表情が頭をよぎって、私は湧き起こる後ろめたさを紛らわすようにビールを口に含んだ。

「それってどんな人? 仁奈も知ってる人?」

 千穂が興味津々に聞いてくる。

「滉太郎さんの上司の娘さんだから、私もその日初めて会ったの。いい人そうだったよ。かわいらしかったし」

「元上司ってことは、父親は外交官? 役職は?」

「そこまでは知らないけど……元駐英大使って言ってた」

「うわー元大使ってエリートじゃん。その娘ってことは良いとこのお嬢様なんだね、その子。仁奈と全然違うじゃん」

「あはは、そうだね」

 笑いながら言う千穂の言葉にはトゲがあった。

 でも私の家が裕福でないことは事実だから、笑って受け流すしかない。
< 60 / 123 >

この作品をシェア

pagetop