エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 滉太郎さんはグレンチェックのおしゃれなスーツを華麗に着こなしていた。目を奪われずにはいられない。

「仁奈のそのワンピース、ロンドンで俺が買ったやつ?」

 いざ指摘されると、物を持っていないと思われるようで恥ずかしかった。いや、事実なのだけれど。

 頷くと、滉太郎さんは意外にも嬉しそうに笑った。

「あの時に戻ったみたいでいいな。今日はロンドンのやり直しも兼ねてるから」

「やり直し?」

「あの日は忙しくて、ろくに仁奈を楽しませられなかっただろ? 今さらだけど後悔してたんだ。今日はしっかりエスコートするから楽しみにしていて」

 耳元で囁かれて、吐息がかかった耳朶が熱を持つ。

 楽しみにって、今日が最後だから気をつかってくれているの? 現実を思い出して、冷静な思考を取り戻そうとする。でも滉太郎さんに手を握られると途端に心臓が飛び跳ねて、私は平常心でいられなくなった。

 食事をするとだけ言われていたから、てっきりレストランに行くのだと思っていた。でも着いた先はホテルで、しかもスイートルームに案内された。

 部屋の広さに圧倒されて部屋の真ん中で立ち尽くす。滉太郎さんの家も広いけど、このスイートルームも負けず劣らず広い。L字型のソファの向こう、 壁一面の大きな窓から見える夜景は圧巻だ。私みたいな庶民が足を踏み入れていい場所ではない気がする。

 ソファの前にもローテーブルはあるのに、別でダイニングテーブルも設置されていた。長方形のテーブルに椅子は二脚。白いテーブルクロスが敷かれ、グラスとカトラリーが綺麗に置かれている。

「部屋で食事をしたら、そのまま休めるし効率的だろ」
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