エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
***
腕の中にいる仁奈が寝息を立てているのを確認して、俺は閉じていた目を開いた。
仁奈が寝やすいよう明かりを消しているから表情は見えないが、きっと疲れさせてしまっただろう。仁奈は初めてだったのに、一回で終わってあげられなかった。
自分でも止められなかった。仁奈の体に俺という存在を消えないように刻みつけたいという欲求に抗えなかったのだ。まさか、別れを告げられるとは思いもしなかったから。
肌に触れる柔らかな肌の温もりを名残惜しく思いながら、俺はそっとベッドを抜け出した。物音を立てないよう寝室を出ると、リビングのランプをひとつだけつけてソファへ座る。
抱き合った後、仁奈にどうして突然別れを告げたのか尋ねた。表面上はあくまで冷静に。
『滉太郎さんのお父様の秘書の方から伺ったんです。滉太郎さんは私と偽装結婚を解消して、他の方と結婚したいと思っているって』
後ろめたそうに話す仁奈が嘘をついているとは思えない。だが、どうにも不可解な話だった。
俺は父に仁奈との結婚が偽装結婚だと話したことはない。そもそも結婚を急かす父から逃れたいがために偽装結婚をしたのだ。その父に暴露しては意味がない。なのにどうして偽装結婚だと知っているんだ?
ソファの前のローテーブルに置きっぱなしだったスマホを手に取った。電話帳アプリから父の名前を探す。もう夜の十一時を過ぎているが、きっと父はまだ仕事をしているはずだ。政治家に休みはない。
実際、父はワンコールで電話に出た。
『どうしたんだ、滉太郎。珍しいな。君から電話をかけてくるなんて』
父の声は明るかった。血の繋がりがないにも関わらず、俺を邪険にすることはない。実の息子のように懐に入れてくれている、誠実な人だ。母の再婚相手がこの人で良かったと、母を見初めた父には感謝をしている。
だがそれとこれとは話が別だ。
「仁奈になにを吹き込んだんですか?」
『……私は事実を伝えただけだよ』
電話の向こうの空気が変わった。
腕の中にいる仁奈が寝息を立てているのを確認して、俺は閉じていた目を開いた。
仁奈が寝やすいよう明かりを消しているから表情は見えないが、きっと疲れさせてしまっただろう。仁奈は初めてだったのに、一回で終わってあげられなかった。
自分でも止められなかった。仁奈の体に俺という存在を消えないように刻みつけたいという欲求に抗えなかったのだ。まさか、別れを告げられるとは思いもしなかったから。
肌に触れる柔らかな肌の温もりを名残惜しく思いながら、俺はそっとベッドを抜け出した。物音を立てないよう寝室を出ると、リビングのランプをひとつだけつけてソファへ座る。
抱き合った後、仁奈にどうして突然別れを告げたのか尋ねた。表面上はあくまで冷静に。
『滉太郎さんのお父様の秘書の方から伺ったんです。滉太郎さんは私と偽装結婚を解消して、他の方と結婚したいと思っているって』
後ろめたそうに話す仁奈が嘘をついているとは思えない。だが、どうにも不可解な話だった。
俺は父に仁奈との結婚が偽装結婚だと話したことはない。そもそも結婚を急かす父から逃れたいがために偽装結婚をしたのだ。その父に暴露しては意味がない。なのにどうして偽装結婚だと知っているんだ?
ソファの前のローテーブルに置きっぱなしだったスマホを手に取った。電話帳アプリから父の名前を探す。もう夜の十一時を過ぎているが、きっと父はまだ仕事をしているはずだ。政治家に休みはない。
実際、父はワンコールで電話に出た。
『どうしたんだ、滉太郎。珍しいな。君から電話をかけてくるなんて』
父の声は明るかった。血の繋がりがないにも関わらず、俺を邪険にすることはない。実の息子のように懐に入れてくれている、誠実な人だ。母の再婚相手がこの人で良かったと、母を見初めた父には感謝をしている。
だがそれとこれとは話が別だ。
「仁奈になにを吹き込んだんですか?」
『……私は事実を伝えただけだよ』
電話の向こうの空気が変わった。