エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 翌日から行きは滉太郎さんの車で、帰りはタクシーで移動するようになった。

 心配した滉太郎さんの提案で、互いの位置が確認できるGPSアプリもインストールした。万全な対策のおかげで、誰かにつけられていると思うことはなくなった。

「ごめん。今日は夜に会議が入ったから、帰るのが遅くなると思う」

 車通勤の二日目。滉太郎さんに送ってもらって、職場の区役所の裏口近くの路上に車を停めてもらった。滉太郎さんの出勤時間を考慮して、以前より一時間早く到着しているから人通りはまばらだ。

「はい、お仕事頑張ってください」

「仁奈もな。今日も帰りはタクシーを使うんだぞ。なにかあったらすぐに連絡してくれ」

 うなずいて車のドアを開けようとすると滉太郎さんの腕が伸びてきて、体を引き寄せられてキスされた。不意打ちで、私は顔を赤くしながら辺りを見回した。

「だ、誰かに見られたらどうするんですか!」

「誰もいないよ。まあ、俺は別に見られても構わないけど。仁奈が俺のものだってアピールできるし」

「私が構います」

 職場の前でキスなんてしていたら絶対噂が広まる。死活問題だ。ムッと睨む私を見て滉太郎さんは笑った。

「指輪をつけてくれたら、もうちょっと安心できるんだけど」

 私の左手の薬指を撫でて、滉太郎さんの手が離れる。滉太郎さんからもらった指輪は、まだリングケースの中にしまってある。滉太郎さんのお父さんにきちんと認めてもらってから堂々とつけたくて、入籍もまだ未定の状態だ。

「ごめんなさい、私のわがままで」

「いいよ。俺の家族のことも大事にしてくれてありがとう。父の予定があいたら、ふたりで会いに行こう」
< 98 / 123 >

この作品をシェア

pagetop