工場の闇に咲く恋 ~レンズが捉えた秘密~
二人が慌ててリビングへ駆けつけると、そこには信じられない光景が広がっていた。
幸輝は床にのたうち回り、下半身は血まみれになっている。そして、男としての大事な部分が、根元からきれいに切り取られ、失われていた。
「何してるの、パパ!? これ……どうしたの!?」
ふみは青ざめて貞夫に問いかける。貞夫は手に持ったチェーンソーの刃を布で拭きながら、冷たい声で答えた。
「切り落としたんだよ。あいつがあんなことばっか考えて、汚い妄想ばっかりしてるからな。もう二度とお前を狙ったり、変なこと考えたりできないようにしてやった」
ふみは呆然と立ち尽くし、辺りを見回すと、幸輝のそばに見慣れない黒い箱のようなものが転がっているのに気づいた。何かと思って手に取ってみると、据え置き型でシリコン製のお尻がついた、二つの穴の開いた形をしていた。
「これ……何?」
よく見ると、その側面には自分の写真が貼り付けられている。
「なんで私の写真が……このお尻の形も、まるで……」
「ふみ、触るな!」
愛斗が慌てて声を上げる。ふみはビクッとして、すぐにその物体から手を離した。
「こんなところにいたらだめだ。ふみ、コンビニに行こう。外の空気を吸った方がいい」
「……うん」
ふみはまだ先ほど見た光景と、奇妙なおもちゃのことで頭がいっぱいだったが、愛斗に促されるまま車に乗り込んだ。シートに腰を下ろすと、急に震えが止まらなくなり、過呼吸気味になる。愛斗はエンジンをかけずに、ふみが落ち着くまで背中をさすりながら待っていた。
数分して、ようやくふみが落ち着きを取り戻すと、おずおずと口を開いた。
「ねえ愛斗くん……さっきのお尻の形したシリコン、あれは一体何だったの?」
愛斗はため息をつき、説明した。
「あれは……男が自分でするためのおもちゃだよ。中にローションを入れて、そこに自分のを入れると、まるでセックスしてるみたいな感覚で刺激されるんだ。……きっと幸輝は、あれをお前に見立てて、ふみとしているつもりで、毎日自分を慰めてたんだろう」
「そうなんだ……気持ち悪い……」
ふみは顔をしかめたが、ふと思い出したように愛斗を見た。
「……ところで、愛斗くんはああいうの、したことあるの?」
「ないよ。俺にはお前がいるのに、なんであんなもの使う必要があるんだ」
ふみは少しだけ表情を緩めて、からかうように言った。
「ふうん……でも詳しかったってことは、興味はあるんだね?」
愛斗は苦笑いを浮かべ、ふみの手を取った。
「……興味がないと言ったら嘘になるけど。でも俺は、ふみと一緒に使ってみたいんだ。さっきの幸輝が持ってたみたいな下品なやつじゃなくて、もっと二人で気持ちよくなれそうな、似たようなやつ」
ふみは瞳を輝かせて笑った。
「いいよ。いつか買いに行こう」
「ありがとう」
愛斗はエンジンをかけ、車を発進させた。向かう先は、品揃えの豊富なディスカウントストア「ドン・キホーテ」。
店に着き、二人は人目を忍ぶようにして奥のアダルトグッズコーナーへと進む。棚には様々な形や大きさの商品が並んでいて、ふみは興味津々で眺めていた。
すると、一つの箱に目を留めて手に取る。
「……なにこれ? 『電動マッサージ機』だって。へえ、こんなのもあるんだ」
二人はカゴいっぱいにグッズを詰め込んでいた。
「愛斗くん、大人のおもちゃ、そんなに興味あるんだね」
愛斗は、幸輝がふみを想像してあのおもちゃで自慰していたことに腹が立ち、つい勢いで買い込んでしまっただけだった。自分まであいつと同じように思われたら——ふみに引かれてしまったら、と不安になり、
「……戻そうか」
と、カゴを返そうとする。だがふみがその手を制した。
「買おうよ」
「でも……俺まであいつと同じになっちゃう。ふみに嫌われたくないんだ」
ふみは柔らかく笑って首を振る。
「大丈夫。幸輝がするのは気持ち悪いだけだけど、愛斗くんが私のために使ってくれるなら、すごく嬉しいよ」
「……ふみ、ありがとう」
「それにね、こんなにたくさん店員さんに見せるの、すごく勇気いるね。それと、パパが見たらどんな顔するかな」
二人は会計時の店員の反応や、貞夫の驚く顔を想像して、くすくすと笑い合った。
会計を済ませて車に乗り、コンビニへ向かう途中、ふみがぽつりと呟く。
「……家には、まだ帰りたくないな」
「じゃあ、ラブホテルに行くか」
「……うん」
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