工場の闇に咲く恋 ~レンズが捉えた秘密~
体を重ね合い、互いの体温を感じ合った後、二人はゆっくりと服を身に着け、ベッドから降りた。
その瞬間、ふと視線を感じて顔を上げると、戸口に幸輝が立っていた。
愛斗とっ見るや否や、慌てて背中を向け、乱れたズボンを急いで引き上げる。どうやらしばらく前から部屋の中を覗き見ていたらしい。
愛斗はすぐさまふみの肩を抱き寄せ、彼女の視界を塞ぐように覆いかぶさると、そのまま唇を奪った。驚いて目を丸くするふみに構わず、今度は逆に幸輝にしっかりと見せつけるように、わざとらしく深く長い口づけを交わす。まるで「俺のものに手を出すな」と宣告するかのような、権力を示す行為だった。
ゆっくりと唇を離すと、ふみがまだ混乱したように問いかける。
「……どうしたの、急に」
「好きだからしたんだ。理由なんてそれだけだろ」
愛斗は答えると、再びふみの額に軽くキスを落とした。
戸口では幸輝が、その光景を見たまま動けず、涙をぽろぽろと流していた。悔しさなのか、欲求不満なのか、それとも自分だけが置いていかれたような寂しさなのか、言葉にはできない感情が溢れ出ているようだった。
愛斗はふみの耳元に口を寄せ、囁くように告げた。
「ふみ、もっちゃんが来てる」
「えっ……!?」
ふみは驚きに目を見開き、慌てて幸輝の方を向く。
「も、もっちゃん……いつからそこにいたの?」
幸輝は涙を拭きながら、ぎこちない笑顔を作って答える。
「……さっき来たよ。ほんの今来たばかり」
「あ、そうなの……。……なにも、見てないよね?」
「なんのことだい?」
「……別に、なんでもないの」
ふみは顔を赤らめ、うつむいた。さっきまで愛斗と交わしていた行為を全部見られていたのではないかと思うと、不安で居ても立ってもいられない。愛斗はそんな彼女の手をしっかりと握り、「大丈夫だ」というように指で合図する。
二人は並んで寝室を出ると、リビングへと向かった。
リビングのソファには、ふみの父親である貞夫と、幸輝の母であり貞夫とは昔から同期だったカルが、楽しそうにお茶を飲んでいた。
「二人とも、おかえり。いいところに帰ってきたね」
「ただいま、父さん。カルさんもいらっしゃい」
貞夫はにこにこと笑いながら、突然思いついたように話し始める。
「急な話なんだが、明日みんなで草津へ旅行に行くことになったんだ。俺とカルさん、二人の誕生日が明日だろ? テレビで草津温泉の特集を見ていたら、急に行きたくなっちゃってね。せっかくだからふみも愛斗も、二人で一緒に来なさい」
「うん、いいよ。ぜひ連れて行って」
ふみが嬉しそうに頷き、愛斗も隣で笑顔で同意する。
それから四人で明日の準備や計画についてあれこれと話し合い、結局、足りないものを買いに今から出かけることになった。
車に乗り込むと、運転はふみが担当し、助手席には貞夫が座る。後部座席には愛斗と幸輝、そしてカルが並んだ。愛斗はわざと幸輝の隣に腰を下ろす。
車が走り出すと、隣に座った幸輝は、ずっとスマートフォンの画面をじっと見つめていた。時折、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべているのが気になり、愛斗はさりげなく視線を送り、画面を覗き見た。
そこには**「女性用 勝負下着」**という検索ワードが表示され、次々と様々なデザインのパンツやブラジャーの画像が並んでいた。
(ふみのために……?)
愛斗は胸の奥がざわついたが、何もないふりをして前を向いた。
しばらく車を走らせ、大きなショッピングモールに到着。
「先に見て回ろう」ということになり、自然と男女二手に分かれる。貞夫は「俺はちょっとトイレに行ってくるから、先に行っててくれ」と言って、一人で別の方向へ歩いていった。
愛斗は迷わず幸輝の側に行き、下着売り場へと向かう。
「俺、ほしいものなかったから、あっちの方も見てくるわ」
幸輝がそう言って離れようとするのを、愛斗は「ああ、わかった」と軽く返し、彼を行かせる。だが、すぐに商品棚の隙間から、こっそりと幸輝の様子を監視し始めた。
幸輝は周りに誰もいないことを確認すると、女性用の下着コーナーへと進み、指で商品をなぞりながら、一人で口に出して呟いた。
「ふみちゃんとの勝負下着……どれがいいかな…」
にやけた顔で次々と下着を手に取り、まるでふみがそれを身に着けている姿を想像するかのように、いやらしい目つきで品定めを続ける。
(やっぱりな……)
愛斗は怒りを押し殺し、わざと音を立てて彼の背後から近づいた。
「なに選んでるの?」
「うわっ!」
幸輝は驚いて手に持っていたパンツを落としそうになるが、すんでのところで掴み直す。慌てふためく様子を見て、愛斗はさも何も知らないフリをして笑いかける。
「なんにもないよ……! 別に自分用とかじゃなくて……」
「ふうん。……それ、俺も同じやつほしいな。どこに置いてあったの?」
愛斗は、幸輝がふみのために選んでいるそのパンツを指さした。
幸輝は自分が欲しいものを取られるとも思わず、無邪気に教えてしまう。
「ああ、ここだよ。同じのがまだ二つあったはず」
「ありがとう、助かるわ」
愛斗は笑顔でそれを手に取った。自分がそれを買い、ふみに渡すことなど、この男は夢にも思っていないだろう。自分の悪意も、行為も、全部俺が横取りして、俺のものにしてやる——愛斗は心の中でそう呟いた。
その後、一通りの買い物を済ませ、二人は合流した貞夫とカルと共に、フードコートでうどんを食べてから、夕方になって家へと帰宅した。
その瞬間、ふと視線を感じて顔を上げると、戸口に幸輝が立っていた。
愛斗とっ見るや否や、慌てて背中を向け、乱れたズボンを急いで引き上げる。どうやらしばらく前から部屋の中を覗き見ていたらしい。
愛斗はすぐさまふみの肩を抱き寄せ、彼女の視界を塞ぐように覆いかぶさると、そのまま唇を奪った。驚いて目を丸くするふみに構わず、今度は逆に幸輝にしっかりと見せつけるように、わざとらしく深く長い口づけを交わす。まるで「俺のものに手を出すな」と宣告するかのような、権力を示す行為だった。
ゆっくりと唇を離すと、ふみがまだ混乱したように問いかける。
「……どうしたの、急に」
「好きだからしたんだ。理由なんてそれだけだろ」
愛斗は答えると、再びふみの額に軽くキスを落とした。
戸口では幸輝が、その光景を見たまま動けず、涙をぽろぽろと流していた。悔しさなのか、欲求不満なのか、それとも自分だけが置いていかれたような寂しさなのか、言葉にはできない感情が溢れ出ているようだった。
愛斗はふみの耳元に口を寄せ、囁くように告げた。
「ふみ、もっちゃんが来てる」
「えっ……!?」
ふみは驚きに目を見開き、慌てて幸輝の方を向く。
「も、もっちゃん……いつからそこにいたの?」
幸輝は涙を拭きながら、ぎこちない笑顔を作って答える。
「……さっき来たよ。ほんの今来たばかり」
「あ、そうなの……。……なにも、見てないよね?」
「なんのことだい?」
「……別に、なんでもないの」
ふみは顔を赤らめ、うつむいた。さっきまで愛斗と交わしていた行為を全部見られていたのではないかと思うと、不安で居ても立ってもいられない。愛斗はそんな彼女の手をしっかりと握り、「大丈夫だ」というように指で合図する。
二人は並んで寝室を出ると、リビングへと向かった。
リビングのソファには、ふみの父親である貞夫と、幸輝の母であり貞夫とは昔から同期だったカルが、楽しそうにお茶を飲んでいた。
「二人とも、おかえり。いいところに帰ってきたね」
「ただいま、父さん。カルさんもいらっしゃい」
貞夫はにこにこと笑いながら、突然思いついたように話し始める。
「急な話なんだが、明日みんなで草津へ旅行に行くことになったんだ。俺とカルさん、二人の誕生日が明日だろ? テレビで草津温泉の特集を見ていたら、急に行きたくなっちゃってね。せっかくだからふみも愛斗も、二人で一緒に来なさい」
「うん、いいよ。ぜひ連れて行って」
ふみが嬉しそうに頷き、愛斗も隣で笑顔で同意する。
それから四人で明日の準備や計画についてあれこれと話し合い、結局、足りないものを買いに今から出かけることになった。
車に乗り込むと、運転はふみが担当し、助手席には貞夫が座る。後部座席には愛斗と幸輝、そしてカルが並んだ。愛斗はわざと幸輝の隣に腰を下ろす。
車が走り出すと、隣に座った幸輝は、ずっとスマートフォンの画面をじっと見つめていた。時折、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべているのが気になり、愛斗はさりげなく視線を送り、画面を覗き見た。
そこには**「女性用 勝負下着」**という検索ワードが表示され、次々と様々なデザインのパンツやブラジャーの画像が並んでいた。
(ふみのために……?)
愛斗は胸の奥がざわついたが、何もないふりをして前を向いた。
しばらく車を走らせ、大きなショッピングモールに到着。
「先に見て回ろう」ということになり、自然と男女二手に分かれる。貞夫は「俺はちょっとトイレに行ってくるから、先に行っててくれ」と言って、一人で別の方向へ歩いていった。
愛斗は迷わず幸輝の側に行き、下着売り場へと向かう。
「俺、ほしいものなかったから、あっちの方も見てくるわ」
幸輝がそう言って離れようとするのを、愛斗は「ああ、わかった」と軽く返し、彼を行かせる。だが、すぐに商品棚の隙間から、こっそりと幸輝の様子を監視し始めた。
幸輝は周りに誰もいないことを確認すると、女性用の下着コーナーへと進み、指で商品をなぞりながら、一人で口に出して呟いた。
「ふみちゃんとの勝負下着……どれがいいかな…」
にやけた顔で次々と下着を手に取り、まるでふみがそれを身に着けている姿を想像するかのように、いやらしい目つきで品定めを続ける。
(やっぱりな……)
愛斗は怒りを押し殺し、わざと音を立てて彼の背後から近づいた。
「なに選んでるの?」
「うわっ!」
幸輝は驚いて手に持っていたパンツを落としそうになるが、すんでのところで掴み直す。慌てふためく様子を見て、愛斗はさも何も知らないフリをして笑いかける。
「なんにもないよ……! 別に自分用とかじゃなくて……」
「ふうん。……それ、俺も同じやつほしいな。どこに置いてあったの?」
愛斗は、幸輝がふみのために選んでいるそのパンツを指さした。
幸輝は自分が欲しいものを取られるとも思わず、無邪気に教えてしまう。
「ああ、ここだよ。同じのがまだ二つあったはず」
「ありがとう、助かるわ」
愛斗は笑顔でそれを手に取った。自分がそれを買い、ふみに渡すことなど、この男は夢にも思っていないだろう。自分の悪意も、行為も、全部俺が横取りして、俺のものにしてやる——愛斗は心の中でそう呟いた。
その後、一通りの買い物を済ませ、二人は合流した貞夫とカルと共に、フードコートでうどんを食べてから、夕方になって家へと帰宅した。