工場の闇に咲く恋 ~レンズが捉えた秘密~
夜ご飯を食べ終え、食器を片付けた後、二人は並んでソファに腰を下ろした。愛斗がふみの肩を抱き寄せると、ふみは自ら唇を重ね、柔らかく温かな口づけを交わした。
キスを終えてもなお、ふみは愛斗の腕の中に収まったまま、真剣な瞳で彼を見つめる。
「愛斗くん、明日ね……もっちゃんを家に呼ぼうと思うの」
「は? だめだ、ふみ。絶対に呼んじゃいけない」
愛斗は即座に反対し、ふみの肩を強く掴んだ。
「あいつがどんな下心を持ってるか、俺たちはもう知ってるだろ。お前に何をしでかすかわかったもんじゃない。危険すぎる」
「大丈夫だよ。ちゃんと計画してあるの。……私一人で、はっきりと話しつけてやるから。愛斗くんも少しだけ協力してくれる?」
ふみはそっと身を乗り出し、自分の考えている計画のすべてを、愛斗にだけ打ち明けた。相手の行動を誘い、弱みを握り、すべてを白日のもとにさらすための、彼女なりの覚悟の作戦だった。
「嫌だよ、そんな危ないこと……。何もそんな手を使わなくても……」
「大丈夫だって。愛斗くんが、私がされる前に助けに来てくれたら、それで全部うまくいくの」
真剣で、それでいて自分を守るために必死に考えてくれたふみの顔を見て、愛斗は言葉を失った。
——そうだ。彼女はいつだって俺のために、俺の過去の罪や不安から守ろうとしてくれる。今回だって、俺が密造に関わった昔の噂が広まるのを防ぐため、そして幸輝の悪意を封じ込めるために、自分を張って立とうとしてくれているんだ。
愛斗はため息をつき、覚悟を決めて頷いた。
「……わかった。俺も協力する。お前がそこまで決めてるなら、俺は信じる。だけど、少しでも危ないと思ったらすぐに俺を呼べ。絶対に一人で抱え込むなよ」
「うん! ありがとう、愛斗くん!」
ふみは嬉しそうに笑い、再び愛斗の首に抱きついた。
——そして次の日。
約束通り昼過ぎになると、インターホンが鳴り、幸輝が家を訪ねてきた。ふみが扉を開けると、彼はにこやかな笑顔を浮かべて立っている。
「こんにちは、ふみちゃん。突然ごめんね」
「いらっしゃい、もっちゃん。上がって」
幸輝は家の中へと足を踏み入れ、辺りを素早く見回す。物音ひとつしないのを確認すると、
「今日はお父さんも愛斗くんもいないの? ふみちゃん一人?」
「うん、みんな用事で出かけちゃって。私だけなの」
その言葉を聞いた途端、幸輝の顔つきが変わった。
先ほどまでの丁寧な笑顔は消え、下品で欲にまみれたニヤニヤとした笑みが、だらしなく口元に広がる。
そして、ふみの服装を頭のてっぺんからつま先までじろじろと眺め回す。今日のふみは、少しだけ襟元の開いた白いブラウスを着ていた。
「……白い服か透けて見えるじゃん」
「え? なにか言った?」
「なんでもないよ。独り言だ」
ふみは幸輝の変化に気づかないふりをして、「お茶入れるね、待ってて」と台所へと向かった。
台所に着くと、戸棚の陰に隠れていた愛斗と目を合わせ、小さく頷く。計画通り、すべて順調に進んでいることを確認し、用意しておいた紅茶をカップに注いだ。
「お待たせ。はい、どうぞ」
ふみがカップをテーブルに置くと、幸輝は受け取るふりをして、わざと手を滑らせた。紅茶はふみの白いブラウスに勢いよくかかり、胸元からお腹にかけて一気に濡らしていく。
「きゃっ……冷たいっ」
「あ、ごめんごめん! 手が滑っちゃった。服、びっしょり濡れちゃったね。……そのままだと透けちゃうよ? 寒いでしょ?」
わざとやったに決まっている。幸輝は慌てるそぶりも見せず、逆に紅茶で透けた布越しのふみの体を、歓喜に満ちた目で食い入るように見つめている。
「そうだ、せっかく草津旅行で買ってきたんだった。これ、ふみちゃんにあげる」
幸輝は自分が持ってきたラッピング袋を差し出した。ふみが受け取って中を開けると、そこにはレースばかりで生地の少ない、明らかに性的な目的で選んだとわかる女性用の勝負下着が入っていた。
「え……? なにこれ……」
「プレゼントだよ。ふみちゃんにピッタリだと思って。今着替えるなら、これ着てみなよ。俺が見ててあげるから」
下心を隠すことも忘れ、幸輝は席を立つと、ふみの腕を掴み、そのまま押し倒すように襲いかかってきた。
「やめてっ!」
「ふみちゃんが好きだ愛斗とわかれて」
ふみの叫び声を合図に、隠れていた愛斗、そして貞夫がすぐさまリビングへと飛び出してきた。
「なんでお前らがここにいるんだ!?」
突然の登場に幸輝は驚き、体を硬直させる。愛斗は彼を突き飛ばすようにしてふみから引き離し、自分の背中に隠して怒鳴った。
「俺のふみに、何てことしてくれてんだよ……!」
「幸輝」
貞夫が低く、重い声で名前を呼んだ。いつもは穏やかな彼の目が、今は氷のように冷たく、鋭く光っている。
「お前が旅行中からふみをエロい目で見ていたこと、店で食べ物に汚いものを入れたこと、今日こうして襲いかかってきたこと……全部、全部俺たちは知ってる。言い訳は聞かん。俺が今からお前に話すこと、絶対に守れ」
貞夫は幸輝を厳しく叱責し、さらにもう一つの重要な約束を取り付けた。
「昔、俺たちの工場で鉄砲の密造があったのは知ってるな。それをお前が真と稔の親父たちから盗んだ——そういう筋書きにする。今後、その話が出たら、絶対にそうだと言え。俺たちに迷惑がかからないように、全部お前が引き受けろ」
幸輝はもはや逆らうこともできず、青ざめた顔でただ頷くしかなかった。
「……わかりました。俺が全部、言われた通りにします」
「ありがとう、もっちゃん」
、ふみは愛斗の背中から顔を出し、晴れやかな笑顔で手を差し伸べた。これで愛斗の過去の罪も、自分への悪意も、すべて封じ込めることができたのだ。
キスを終えてもなお、ふみは愛斗の腕の中に収まったまま、真剣な瞳で彼を見つめる。
「愛斗くん、明日ね……もっちゃんを家に呼ぼうと思うの」
「は? だめだ、ふみ。絶対に呼んじゃいけない」
愛斗は即座に反対し、ふみの肩を強く掴んだ。
「あいつがどんな下心を持ってるか、俺たちはもう知ってるだろ。お前に何をしでかすかわかったもんじゃない。危険すぎる」
「大丈夫だよ。ちゃんと計画してあるの。……私一人で、はっきりと話しつけてやるから。愛斗くんも少しだけ協力してくれる?」
ふみはそっと身を乗り出し、自分の考えている計画のすべてを、愛斗にだけ打ち明けた。相手の行動を誘い、弱みを握り、すべてを白日のもとにさらすための、彼女なりの覚悟の作戦だった。
「嫌だよ、そんな危ないこと……。何もそんな手を使わなくても……」
「大丈夫だって。愛斗くんが、私がされる前に助けに来てくれたら、それで全部うまくいくの」
真剣で、それでいて自分を守るために必死に考えてくれたふみの顔を見て、愛斗は言葉を失った。
——そうだ。彼女はいつだって俺のために、俺の過去の罪や不安から守ろうとしてくれる。今回だって、俺が密造に関わった昔の噂が広まるのを防ぐため、そして幸輝の悪意を封じ込めるために、自分を張って立とうとしてくれているんだ。
愛斗はため息をつき、覚悟を決めて頷いた。
「……わかった。俺も協力する。お前がそこまで決めてるなら、俺は信じる。だけど、少しでも危ないと思ったらすぐに俺を呼べ。絶対に一人で抱え込むなよ」
「うん! ありがとう、愛斗くん!」
ふみは嬉しそうに笑い、再び愛斗の首に抱きついた。
——そして次の日。
約束通り昼過ぎになると、インターホンが鳴り、幸輝が家を訪ねてきた。ふみが扉を開けると、彼はにこやかな笑顔を浮かべて立っている。
「こんにちは、ふみちゃん。突然ごめんね」
「いらっしゃい、もっちゃん。上がって」
幸輝は家の中へと足を踏み入れ、辺りを素早く見回す。物音ひとつしないのを確認すると、
「今日はお父さんも愛斗くんもいないの? ふみちゃん一人?」
「うん、みんな用事で出かけちゃって。私だけなの」
その言葉を聞いた途端、幸輝の顔つきが変わった。
先ほどまでの丁寧な笑顔は消え、下品で欲にまみれたニヤニヤとした笑みが、だらしなく口元に広がる。
そして、ふみの服装を頭のてっぺんからつま先までじろじろと眺め回す。今日のふみは、少しだけ襟元の開いた白いブラウスを着ていた。
「……白い服か透けて見えるじゃん」
「え? なにか言った?」
「なんでもないよ。独り言だ」
ふみは幸輝の変化に気づかないふりをして、「お茶入れるね、待ってて」と台所へと向かった。
台所に着くと、戸棚の陰に隠れていた愛斗と目を合わせ、小さく頷く。計画通り、すべて順調に進んでいることを確認し、用意しておいた紅茶をカップに注いだ。
「お待たせ。はい、どうぞ」
ふみがカップをテーブルに置くと、幸輝は受け取るふりをして、わざと手を滑らせた。紅茶はふみの白いブラウスに勢いよくかかり、胸元からお腹にかけて一気に濡らしていく。
「きゃっ……冷たいっ」
「あ、ごめんごめん! 手が滑っちゃった。服、びっしょり濡れちゃったね。……そのままだと透けちゃうよ? 寒いでしょ?」
わざとやったに決まっている。幸輝は慌てるそぶりも見せず、逆に紅茶で透けた布越しのふみの体を、歓喜に満ちた目で食い入るように見つめている。
「そうだ、せっかく草津旅行で買ってきたんだった。これ、ふみちゃんにあげる」
幸輝は自分が持ってきたラッピング袋を差し出した。ふみが受け取って中を開けると、そこにはレースばかりで生地の少ない、明らかに性的な目的で選んだとわかる女性用の勝負下着が入っていた。
「え……? なにこれ……」
「プレゼントだよ。ふみちゃんにピッタリだと思って。今着替えるなら、これ着てみなよ。俺が見ててあげるから」
下心を隠すことも忘れ、幸輝は席を立つと、ふみの腕を掴み、そのまま押し倒すように襲いかかってきた。
「やめてっ!」
「ふみちゃんが好きだ愛斗とわかれて」
ふみの叫び声を合図に、隠れていた愛斗、そして貞夫がすぐさまリビングへと飛び出してきた。
「なんでお前らがここにいるんだ!?」
突然の登場に幸輝は驚き、体を硬直させる。愛斗は彼を突き飛ばすようにしてふみから引き離し、自分の背中に隠して怒鳴った。
「俺のふみに、何てことしてくれてんだよ……!」
「幸輝」
貞夫が低く、重い声で名前を呼んだ。いつもは穏やかな彼の目が、今は氷のように冷たく、鋭く光っている。
「お前が旅行中からふみをエロい目で見ていたこと、店で食べ物に汚いものを入れたこと、今日こうして襲いかかってきたこと……全部、全部俺たちは知ってる。言い訳は聞かん。俺が今からお前に話すこと、絶対に守れ」
貞夫は幸輝を厳しく叱責し、さらにもう一つの重要な約束を取り付けた。
「昔、俺たちの工場で鉄砲の密造があったのは知ってるな。それをお前が真と稔の親父たちから盗んだ——そういう筋書きにする。今後、その話が出たら、絶対にそうだと言え。俺たちに迷惑がかからないように、全部お前が引き受けろ」
幸輝はもはや逆らうこともできず、青ざめた顔でただ頷くしかなかった。
「……わかりました。俺が全部、言われた通りにします」
「ありがとう、もっちゃん」
、ふみは愛斗の背中から顔を出し、晴れやかな笑顔で手を差し伸べた。これで愛斗の過去の罪も、自分への悪意も、すべて封じ込めることができたのだ。