忘れ「」私、と君



ゆっくり手を引かれながら長い廊下を歩く。


ほんとにこの場所はおとぎ話に出てくるようなお城みたい。

でも派手過ぎず、大人しすぎず……小さな子が憧れそうな、そんな場所。

ランプも派手なシャンデリアとかじゃない。


ここは、彼が一人で過ごしてる場所。


いつから一人なの?ここは誰が建てたの?家族は?


目の前の手を引く彼を見ても、答えは出ない。

返ってこない。でも……。


思考がぐるぐるし始めたところで彼の声が聞こえてきた。


「俺の話はあとで、とりあえず着替えたらー? 海美」

「着替え?」


改めて自分を見たらまるで病院服のようなワンピースともシャツとも言えない服。

全然自分のこと見てなかった。でも……。


「服なんてあるの?」

「うん、きっと海美が好きな服あるよ」


私の好きそうな?


疑問に思いながらも着いていって、また大きな扉の前に着いた。


「ここね、海美の部屋」

「え、私の?」

「それ以外誰いるのさ。俺の部屋は向かいのあっち」


彼が指さす方を見れば確かにまた大きな扉があった。


でも、なんで私の部屋?


彼がさっき言ってたにはここは彼しかいない、のに……。


「ま、とりあえず入りなよ」

「え、あ……うん」

「お邪魔しまーす」

「おじゃま、します」

「なんで海美が言うの。海美の部屋でしょ」


そんな困ったように笑われても……。


やや彼に背中を押される感じに部屋に入った。

中に広がるのはそれはそれは、お姫様のような部屋。


……いや、私の部屋なわけなくない?


ほんとに見れば見るほど小さな子が喜びそうな部屋。

悔しいのは今の私でもすごく好き……。


「え、なんでそんな不満そうなの?」


彼が私の顔を覗き込んだ後に笑いながら言う。

なんとなくむきになって「しらない!」なんて言ってそっぽ向いちゃったけど。


そのまま部屋の奥の衣装部屋に連れてかれた。

開かれた衣装部屋は確かに私好みの服が多かった。


彼がローブだったからそういう系なのかと思ったけどワンピースが多いみたい。


「えぇー、かわいい!」


カラフルだし、丈は眺めのが多いけど。

花柄が多いのかな?でもいろんな種類ある。ほんのりドレス味もあるし。


「わー、知らない服もいっぱーい。こんなあったの」

「え?」

「え?」


彼も知らないの?ん?


「え、まって……あれ?」


そういえば聞いてない、ここのこと。

彼は私を知っているのか。

知り合いなのか……。色々。


「まぁまぁ、話は着替え終わったらね。はい、好きなの着て。俺外で待ってるから」


そういって彼は部屋の外に出て行った。


押されちゃった。なんか、ずっと流されてる気がする。


「……」


彼は一体?そもそもここはどこなのかだし、なんで私がここにいるのか彼は知ってるのかな?


……彼は一体どこまで知ってるんだろう?


ずーっと頭の中はぐるぐるしてるけど、とりあえず彼を待たせてるし着替えることにした。

話は着替えが終わったらって言ってたし、何か教えてくれるといいんだけど。
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