忘れ「」私、と君
第二章 忘れ「ている」
思わず楽しくなっちゃった。
時計ないからどれぐらい経ったかわかんないし。
急いで部屋を出た……けど。
「あれ?」
彼はいなかった。
外居るって言ってた、よね?
あれ?
私遅すぎて置いてかれた?!
さ、探す?
でも私ここ知らない。
変にうろちょろしてすれ違っても嫌だなー。
……いや、でも少し探してみよう。
「んー」
さっき歩いてきた方とは逆行ってみる?
なんか音でもすればいいんだけど。
とりあえず階段があったから降りてみる。
下に何があるのか知らないし……あ、窓から見た時テラスみたいなのあったかも。
探してるときは名前ぐらい呼びたいけど名前忘れたって教えてくれなかったし、不便!
「もうー」
……はぁ、知らないところで何やってるんだろう。
迷子になってもあれだし帰ろう。
彼見つかんないし!
踵を返して戻ろう……としたとき、何か音が聴こえた。
なんとなく、気になっちゃって音の聴こえる方へ歩いてみた。
「あ、噴水」
庭らしきところに出た。
庭の真ん中には大きめの噴水があった。
海近くだし、水引っ張ってるのかな?
淵は広めだし、もう彼は見つかんないし軽く腰かけて水を弄んだ。
指先に水の冷たさを感じながら、目の前のこのお城みたいな建物を見上げてみれば、ほんとに見た目はおとぎの国に出てくるようなお城だった。
そりゃああんな大きな窓もあるよね。
と、ひとり納得した。
噴水の音と、水の冷たさはゆっくり気持ちを落ち着かせてくれる気がして、すごく心地いい。
まぁ、洋服のおかげでだいぶ落ち着いてたけど。
「なーに一人でこんなとこ来てんの?」
声に振り返ると彼が立ってた。
こんな広そうなところなのによく見つけたなーなんてぼんやり考える。
私も割と探した気がするんだけどな。
「……」
「ん?」
「早いお迎えだなーって」
なんとなくそう言ったけど、あれ、だいぶ図々しくない?
慌てて言い訳を頭の中で探そうとしたら、また彼は笑った。
「あれ? さっきよりは早いと思うけど、お嬢様はまだご不満ですか?」
揶揄おうとしてるのか、ほんとに心から楽しくて言ってるのか。
彼の表情からはやっぱり読み切れない。
「別に。部屋出たらいなかったんだもん」
なんか、めんどくさい彼女か我儘お姫様みたいかも……。
きっと私が遅かったのもあると思うし。
謝ろう、そう思ったとき、先に彼の口が開いた。
「あー、ごめんね。キッチン行ってた」
「キッチン?」
「話し、聞きたいんでしょ? ティータイムにしようよ」
そのまま反対側の庭に連れていかれた。
そう、そっちはまさに窓から見たテラスだった。
あと、お花畑の前にはしっかり手入れされたガーデンがあった。
……彼が手入れしてるのかな?
彼しかいないもんね。そっか。
「はい、座っていいよ」
「ありがとうー。あ、クッキー!」
目の前には三段のケーキスタンドがあってその上にはいろんなクッキーが二段分乗ってた。
一番下は果物が乗ってる。
クッキー……なんとなく見た後反射で反応したけど多分、好き。うん。
私がクッキーに反応したのを見た後、彼はくすくす笑って「好きでしょ」と言った。
やっぱり彼は私のことをよく知ってる、気がする。
で、ここまで来たはいいものの、何から切り出したらいいのかわからなくなってとりあえず目の前のクッキーに手を伸ばした。
「ん、おいしい!」
「それはよかった」
さぁ、聞かないとね。
なにから聞こうかな。
「なにが気になる? いや、まぁたくさんありそうだけど」
悩んでるのを見かねてか、彼からそう聞かれた。確かに、たくさんあるけど。
「……あなたは、私をどこまで知ってるの?」
一瞬目が合った後、彼はお茶に口をつけた。
ここまで来て即答じゃないのも気になるし、またはぐらかされるのかな。
なんて薄っすら考える。
ただ、紅茶を飲む彼を見つめながら、その口から発される次の言葉を待つ。
そして少ししたら彼はカップを置いて私と目があった。
「そうだね、たくさん知ってるよ」
たくさん。
たくさんって、どこまで?
「全部って言ったらそれは嘘だからね。そうだなー、まぁ海美が知りたい情報は大体知ってるんじゃない?」
彼はまたにこにこ笑いながら答える。
ほんとにある程度知ってるのか、それとも冗談なのか。
真剣に彼を見つめてみたけど……。
「じゃあ、教えて」
「んー?」
知ってるなら、教えてほしい。
でも彼から返ってきたのは間延びした声だった。
今度はクッキー食べてるし。
自由度が高いなー、なんてどこか他人事に思う。
「知ってるんでしょ、教えて?」
「……」
教えて、って普通のことだと思うんだけど。
彼は黙ってしまった。
ここまで黙られてしまうと、ほんとに知ってるのかすら怪しく思えてしまう。
それでも、今までの反応や言葉から知ってるんだろうなって思うから。
なんで黙るの?
「俺は教えないよ」
ようやく口を開いたかと思えばそう返された。
一瞬、耳を疑った。
けど、いつの間にか笑みは消えて、真剣な顔をしてたから。
あー、これは本当に教えてくれないんだ。
ってわかった。
「……なんで、って聞いていい?」
「俺は海美が思い出さなくていいって思ってるから」
「え?」
今度は即答だった。
即答で、そう淡々と返された。
即答なのにも、言われた言葉にも衝撃を覚えたし。
なぜ?
だけが積もっていく。
思い出さなくていい。
それは、私のため?
彼のため?
それとも別に何かあるの?
何かわかるかも、なんて思ってたけど、謎だけが増えたかも。
……話題、変えてみる?
でも、なんか今から……。
「……え、と」
何言えばいいんだろう。
なんか、あんなこと言われた手前、冷静じゃない気がする。
「……城内まわろうか」
「! うん」
彼は私が困ったり、詰まったりしたらさりげなく提案とかしてくれるから、少し気が楽になる。
……でも同時にやっぱりさっきの言葉が引っ掛かる。
結局いうほどクッキーや紅茶には手をつけなかたけど、彼は大して気にしてない様子で「ほら行こー」なんて言ってまた手を差し出してきた。
「ねぇ」
「んー?」
私のことは教えないのはわかった。
なら次は彼のことを聞きたい。
歩きながら頭の中を整理してたどり着いたのはそこだった。
わかってる情報としては、名前は憶えていない。
ここには彼一人。
それだけ。
なら、次は何聞こう。
出てきたのは……。
「ここはあなたが造ったの?」
「ここって、このお城?」
「うん」
「んーん、俺は作ってない」
返答は意外だった。
ここは彼が造ったわけじゃない。
なら、ほかに誰かいた?
あー、また謎が増えた。
困ったー。
……んー。
「じゃあ、いつから一人なの?」
「んー……生まれた時から?」
「え?」
「ま、厳密には違うかもだけど。元々……」
そこで彼はハッとしたように止めてから私を見た。
え、何?元々?
彼は私を見た後またふっと笑った。
「まぁ、うん。そういうこと。ずっと、一人だよ」
前を向かれちゃって顔はよく見えないけど、纏う雰囲気が、少し寂しく感じた。
時計ないからどれぐらい経ったかわかんないし。
急いで部屋を出た……けど。
「あれ?」
彼はいなかった。
外居るって言ってた、よね?
あれ?
私遅すぎて置いてかれた?!
さ、探す?
でも私ここ知らない。
変にうろちょろしてすれ違っても嫌だなー。
……いや、でも少し探してみよう。
「んー」
さっき歩いてきた方とは逆行ってみる?
なんか音でもすればいいんだけど。
とりあえず階段があったから降りてみる。
下に何があるのか知らないし……あ、窓から見た時テラスみたいなのあったかも。
探してるときは名前ぐらい呼びたいけど名前忘れたって教えてくれなかったし、不便!
「もうー」
……はぁ、知らないところで何やってるんだろう。
迷子になってもあれだし帰ろう。
彼見つかんないし!
踵を返して戻ろう……としたとき、何か音が聴こえた。
なんとなく、気になっちゃって音の聴こえる方へ歩いてみた。
「あ、噴水」
庭らしきところに出た。
庭の真ん中には大きめの噴水があった。
海近くだし、水引っ張ってるのかな?
淵は広めだし、もう彼は見つかんないし軽く腰かけて水を弄んだ。
指先に水の冷たさを感じながら、目の前のこのお城みたいな建物を見上げてみれば、ほんとに見た目はおとぎの国に出てくるようなお城だった。
そりゃああんな大きな窓もあるよね。
と、ひとり納得した。
噴水の音と、水の冷たさはゆっくり気持ちを落ち着かせてくれる気がして、すごく心地いい。
まぁ、洋服のおかげでだいぶ落ち着いてたけど。
「なーに一人でこんなとこ来てんの?」
声に振り返ると彼が立ってた。
こんな広そうなところなのによく見つけたなーなんてぼんやり考える。
私も割と探した気がするんだけどな。
「……」
「ん?」
「早いお迎えだなーって」
なんとなくそう言ったけど、あれ、だいぶ図々しくない?
慌てて言い訳を頭の中で探そうとしたら、また彼は笑った。
「あれ? さっきよりは早いと思うけど、お嬢様はまだご不満ですか?」
揶揄おうとしてるのか、ほんとに心から楽しくて言ってるのか。
彼の表情からはやっぱり読み切れない。
「別に。部屋出たらいなかったんだもん」
なんか、めんどくさい彼女か我儘お姫様みたいかも……。
きっと私が遅かったのもあると思うし。
謝ろう、そう思ったとき、先に彼の口が開いた。
「あー、ごめんね。キッチン行ってた」
「キッチン?」
「話し、聞きたいんでしょ? ティータイムにしようよ」
そのまま反対側の庭に連れていかれた。
そう、そっちはまさに窓から見たテラスだった。
あと、お花畑の前にはしっかり手入れされたガーデンがあった。
……彼が手入れしてるのかな?
彼しかいないもんね。そっか。
「はい、座っていいよ」
「ありがとうー。あ、クッキー!」
目の前には三段のケーキスタンドがあってその上にはいろんなクッキーが二段分乗ってた。
一番下は果物が乗ってる。
クッキー……なんとなく見た後反射で反応したけど多分、好き。うん。
私がクッキーに反応したのを見た後、彼はくすくす笑って「好きでしょ」と言った。
やっぱり彼は私のことをよく知ってる、気がする。
で、ここまで来たはいいものの、何から切り出したらいいのかわからなくなってとりあえず目の前のクッキーに手を伸ばした。
「ん、おいしい!」
「それはよかった」
さぁ、聞かないとね。
なにから聞こうかな。
「なにが気になる? いや、まぁたくさんありそうだけど」
悩んでるのを見かねてか、彼からそう聞かれた。確かに、たくさんあるけど。
「……あなたは、私をどこまで知ってるの?」
一瞬目が合った後、彼はお茶に口をつけた。
ここまで来て即答じゃないのも気になるし、またはぐらかされるのかな。
なんて薄っすら考える。
ただ、紅茶を飲む彼を見つめながら、その口から発される次の言葉を待つ。
そして少ししたら彼はカップを置いて私と目があった。
「そうだね、たくさん知ってるよ」
たくさん。
たくさんって、どこまで?
「全部って言ったらそれは嘘だからね。そうだなー、まぁ海美が知りたい情報は大体知ってるんじゃない?」
彼はまたにこにこ笑いながら答える。
ほんとにある程度知ってるのか、それとも冗談なのか。
真剣に彼を見つめてみたけど……。
「じゃあ、教えて」
「んー?」
知ってるなら、教えてほしい。
でも彼から返ってきたのは間延びした声だった。
今度はクッキー食べてるし。
自由度が高いなー、なんてどこか他人事に思う。
「知ってるんでしょ、教えて?」
「……」
教えて、って普通のことだと思うんだけど。
彼は黙ってしまった。
ここまで黙られてしまうと、ほんとに知ってるのかすら怪しく思えてしまう。
それでも、今までの反応や言葉から知ってるんだろうなって思うから。
なんで黙るの?
「俺は教えないよ」
ようやく口を開いたかと思えばそう返された。
一瞬、耳を疑った。
けど、いつの間にか笑みは消えて、真剣な顔をしてたから。
あー、これは本当に教えてくれないんだ。
ってわかった。
「……なんで、って聞いていい?」
「俺は海美が思い出さなくていいって思ってるから」
「え?」
今度は即答だった。
即答で、そう淡々と返された。
即答なのにも、言われた言葉にも衝撃を覚えたし。
なぜ?
だけが積もっていく。
思い出さなくていい。
それは、私のため?
彼のため?
それとも別に何かあるの?
何かわかるかも、なんて思ってたけど、謎だけが増えたかも。
……話題、変えてみる?
でも、なんか今から……。
「……え、と」
何言えばいいんだろう。
なんか、あんなこと言われた手前、冷静じゃない気がする。
「……城内まわろうか」
「! うん」
彼は私が困ったり、詰まったりしたらさりげなく提案とかしてくれるから、少し気が楽になる。
……でも同時にやっぱりさっきの言葉が引っ掛かる。
結局いうほどクッキーや紅茶には手をつけなかたけど、彼は大して気にしてない様子で「ほら行こー」なんて言ってまた手を差し出してきた。
「ねぇ」
「んー?」
私のことは教えないのはわかった。
なら次は彼のことを聞きたい。
歩きながら頭の中を整理してたどり着いたのはそこだった。
わかってる情報としては、名前は憶えていない。
ここには彼一人。
それだけ。
なら、次は何聞こう。
出てきたのは……。
「ここはあなたが造ったの?」
「ここって、このお城?」
「うん」
「んーん、俺は作ってない」
返答は意外だった。
ここは彼が造ったわけじゃない。
なら、ほかに誰かいた?
あー、また謎が増えた。
困ったー。
……んー。
「じゃあ、いつから一人なの?」
「んー……生まれた時から?」
「え?」
「ま、厳密には違うかもだけど。元々……」
そこで彼はハッとしたように止めてから私を見た。
え、何?元々?
彼は私を見た後またふっと笑った。
「まぁ、うん。そういうこと。ずっと、一人だよ」
前を向かれちゃって顔はよく見えないけど、纏う雰囲気が、少し寂しく感じた。