忘れ「」私、と君
連れられ一通り順繰り回った。
さっき彼が言っていたキッチンに会った大広間、バスルーム、あと本部屋とかたくさんの部屋があった。
「ここは?」
「あー、音楽部屋……だったっけ?」
「え、覚えてないの?」
歯切れの悪い彼の返答に「今まで一人で過ごしてたのに?」って思わず少し笑ってしまった。
「んー、俺は音楽できないからね」
「そーなんだ」
できないのに音楽部屋あるんだ?
まぁ、たまに彼自身も把握しきれてないような部屋もあったけど、全体を大まかに巡った。
最後にはガーデンに戻ってきたけど。
なんとなく聞きづらくなっちゃって、あれ以降質問はできなかったけど。
どうするべきなのか。
「ま、今日は部屋で休んだらー? ここは俺と海美しかいないし、城内なら動き回っても大丈夫だよ」
「城内なら?」
「そ、意外にも森には生き物いるし、あと迷子なりそうだから」
生き物は、いる。
動物?
迷子……。
え、バカにされてる?!
「そんな子供じゃないんだし」
ここ大きいし早々迷子ならないと思うんだけど。
「そうー?……ま、とりあえず今日は城内いてねー」
そういって彼は部屋に戻って行っちゃった。
まぁ、さすがに一人で外にはいかないけど。
日が落ち始めてるし。
「……どうしたらいいかなー」
とりあえずさっきの噴水のところに来て、水を眺めた。
記憶が戻ったとき、彼のことも思い出せるのかな。
ここのことも。
いつ戻るかな。
……思い出さなくていいって、どういう意味なんだろう。
明日から、色々わかるといいんだけど。
指先を噴水に入れて、波紋を作りながら悶々と考えた。