忘れ「」私、と君



「森にはどんな生き物がいるの?」

「え?」


朝ごはんを終えた私たちは昨日の大広間に行った。

というか私が行きたいって言ったんだけど。

どうしても気になっちゃって、窓の外を眺めながら聞いてみた。

昨日生き物いるって言ってたし、どんなのがいるんだろう?


「なんだっけなー、トリとか、シカとかいたと思うけど」

「……行かないの?」

「……行けないの。まぁ、生き物が向こうから来たらまた別だけど、行っちゃだめだよ」

「う、うん」


色々訊きたいことはあるけど、あんまりに真剣な顔をして言われたからそれ以上の追求はやめた。

なんか、こういうの多いかも。

徹底されてるというか、なんというか。


森はだめ、か。


「じゃあ海は?」

「だーめ。お城以外はだめだよ」

「……はぁ、わかったー」


一体何があるの?

昨日、彼が言った思い出さなくていい、と何か関係でもあるのかな?


「その代わりというか、お城の中は自由だから何してもいいよ」

「……ありがとう」


ほんとは他も気になるけど、しかたないか。

ほんとに何か危険なのかもしれないし。


森や海にほんの少し、後ろ髪をひかれながらも大広間を出た。


「ミナトくん……は何するの?」


なんか、違和感あるけどいっか。

外に行けない、となると何するんだろう?


「え、別に……特に何もしないけど、本読んだりしてるぐらい」

「いつも?」

「うん」


彼は即答で返してくる。


一人だったから、かな。

じゃあせっかく二人なんだしね。


「じゃあ、一緒に何かしようよ!」

「……いいよ」


一瞬驚くように目を見開いてから、柔らかく笑ってそう言った。


ずっと一人がいいタイプではないよね?

多分、昨日あれだったし。


「やった! なにしよっか」


っていうかこのお城には何があるの?

昨日見た限りだとー……。


「海美が好きなものならあるんじゃない?」

「え?」

「ピアノもあるし、絵を描くものだってあるし、花畑行くでもいいし」


ピアノ、絵、お花……。

私の好きなもの。


全然覚えてないけど、好きなもの。好きだったもの。


それは、私の。なら。


「ミナトくんの好きなものは?」

「え、俺?」


だって、私は今記憶ない中で好きだったものやるよりもね?

彼のこと気になるし。


素直に教えてくれなそうだし。

ならこういう部分から知りたいよね。


「俺、は……」


彼は少し困ったように周りを見回す。

ここに一人でいた。

本を読んでた。

なら、特にないのかな?


「読書以外しないの?」

「えー、うん。……特には」


また笑った。

でも今回は少し困ったように、眉を下げてる。

あんまり、大きく表情変わんないよなぁ。


「そっか」

「海美が気になることしよう。記憶ないんだし、初めてみたいなもんでしょ?」

「え、うん。そうだね」


……初めてみたいなもん。

来たことあるって、こと?


なら、彼にも会ったことあるってことで。

……あー、なら知ってることにも合致がいく、けど。


なら、やっぱりなんで教えてくれないの?


そしてここはきっと現実じゃない、から。

ほんとにここはどこ?

そして彼は一体誰で、何者なのか……。


「海美?」

「え、ううん! じゃあ、お花畑行こう!」


今は、いいや。
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