ヨクバリなココロなの

素直になれないバレンタイン

 帰宅すると、詩織から連絡が来ていたことに気付いた。

 慌てて内容を確認すると、『咲月さんと喧嘩してしまった』と書かれていた。

「もしもし、詩織?」

 慌てて詩織に通話をする。

『日和……やっと出た』

 心底疲れ切ったような詩織の声が聞こえて来る。

「どうしたの? 喧嘩したって何があったの?」

『今日は咲月の誕生日だから早く帰るつもりだったのに、友達に捕まって帰れなかったんだよね』

「うん」

『咲月にその日は一緒に過ごしたいって言われてたのに、門限に間に合わなかったんだよね……』

「それで咲月さんの機嫌を損ねちゃったの?」

『うん……』

「そっか。じゃあ、今どこなの?」

『高校近くの公園』

「わかった、ちーくんと迎えに行くからちょっと待ってて」

『ごめんね、ありがとう日和』

「どういたしまして。それじゃ、また後でね」

『はーい、また後で』









 千歳と共に高校近くの公園に着くと詩織はベンチに座っていた。

「お待たせ、詩織」

「早かったね」

「ちーくんと車で来たから」

「そっか……」

「じゃ、行こっか。もうすぐ雨が降るって通知来てるし」

「そうだね、行こうか」

 詩織が腰を上げて立ち上がるのを見守ってから共に歩き出した。









 翌日、詩織は咲月さんと話をするべく通話をかけた。

 だが、咲月さんは忙しかったのか通話に出なかった。

「嫌われちゃったのかな……折角、同棲まで始めたばかりだったのに……!」

「そんなことない。きっと、素直になれないだけだよ」

「そう……だよね」

「ねぇ、詩織。今日は休日でバレンタインももうすぐでしょ? だから、チョコを作って謝ればきっと許してくれるよ」

「そっか……そうだね! そうとなったら今からスーパーに行くよ!」











 そうして、スーパーから帰って来ると私達は早速チョコレートを作り始めた。

 そして、数時間後チョコレートが完成すると日和は余ったチョコレートを詩織と一緒に食べていた。

「うん、今年も美味しくなってるねー」

「でも、咲月受け取ってくれるかな? もう要らないって言われちゃいそう……」

「要らないって言われたらあたしに頂戴! ちゃんと食べてあげるから」

「ありがとう、日和。ここまで付き合ってくれて」

「本当にちーくんに送って貰わなくて大丈夫なの?」

「大丈夫。駄目だったらまた連絡するね」

「わかった、上手くいくように祈ってるよ」

「ありがとう、じゃ」

「じゃ!」









 数時間後、友達と遊んでいた千歳が帰って来ると日和は千歳にチョコレートを手渡した。

「わぁ……ありがとう。開けても良い?」

「良いよ」

 梱包がみるみる解けていくのを見守る。

「ありがとう、日和……とっても嬉しいよ」

「どういたしまして」

 日和がそう言った瞬間、千歳が日和を抱き寄せて優しく抱きしめた。










 

『もしもし、日和』

「どうだった?」

 詩織からの通話に出ると詩織の声が涙で震えていた。

『駄目だった……許してくれなかった』

「そっか……またこっち来る?」

『うん、今日の所はお邪魔しても大丈夫かな?』

「一応、ちーくんにも許可取って来るね」

『わかった』

 そして、千歳から許可が降り、ふたりで詩織を迎えに行った。








「お待たせ、行こうか」

「うん……」

 ショックを受けて動けなくなっている詩織を支えながらら、車で帰宅した。









「ねぇ、詩織」

「ん?」

 バレンタインからまもなく一ヶ月が過ぎようとしていた。

「もうすぐホワイトデーだし、ちーくんからデートのお誘いされてるんだよね」

「良いじゃん。ウチはここで待ってるから、いってきなよ」

「ありがとう、ごめんね」

「どういたしましてー」








 そして、ホワイトデー当日日和は千歳とふたりでデートに出かけた。

 最初はネットの海で見つけたカフェに向かった。

「ここ、日和が来てみたいって言ってたから、一緒に行きたくて……」

「ちーくん……! ありがとう……!」

 そこで軽くお昼を済ませると、車で水族館に向かった。

「ちーくん、イルカショーもうすぐだって」

「そっか。じゃあ、濡れちゃうから合羽買いに行こう」

「うん!」

 そして、ベンチに座ってイルカショーを眺めた後、再び館内をゆったり回って楽しんだ。










 すっかり辺りも暗くなって来た頃、千歳は車を走らせてどこかの観光地に向かった。

 なんでもそこの夜景がとても綺麗で、一緒に見たかったらしい。

 高台に着くと、地面一面に光が灯りとても綺麗な景色が広がっていた。

「わぁ……綺麗ー」

「でしょ? デートスポットとして人気らしいよ」

「そうなんだ」

 確かに辺りを見渡すと、カップルばかりがいた。

「はい、これ」

「これは?」

 突然黒い箱に白いリボンでラッピングされた箱を渡され、戸惑う日和に千歳は言った。

「バレンタインのお返しだよ。喜んでくれると嬉しいな」

「ありがとう、開けてみても良い?」

「良いよ。開けてみて」

 千歳からの許可も降りて日和はラッピングを解いていく。

 そこには、手作りの生チョコタルトが入っていた。

「ありがとう、ちーくん!」

「どういたしまして」











 そして、日和達が帰宅すると詩織は一枚の置き手紙を残して家を出ていた。

「やっぱり、詩織ちゃんは気まずかったのかな……元とはいえ、日和の恋敵だったんだし」

「そうなのかもね……それに、あたしも詩織の立場なら気まずく思うと思う」

「だよね、僕も同じだと思う」

「だよね」

「まぁ、今は成功を祈るしかないよね」

「そうだね。ねぇ、一緒にコンビニでも行かない?」

「そうだね、アイスでも買いに行こうか」

「うん!」
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