鬼上司のギャップ沼は落ちたら抜け出せない
佐久間さんとデートするというとんでも展開に気を取られ、その後の仕事に集中できなかった。
しまいには商談の時間に遅れそうになって、佐久間さんの怒号が飛んでくる始末。
「榎本! おまえ、契約台無しにするつもりか!」
気もそぞろになっていた私が悪いのだけれどいつも通り厳しい佐久間さんの声に、私は冷や水を頭からぶっかけられた気分になった。
なんとか気持ちを切り替えて商談は乗り越えたものの、期待でパンパンに膨らんでいた気持ちはすっかり萎れて、私はトボトボと帰路に着いた。
勝手に舞い上がってしまったけれど、ただ映画を見に行くだけ。佐久間さんにとってはデートでもなんでもないのかもしれない。朝のあの時間は、篠嗣さんショックで私の頭がおかしくなって見せた幻覚だったのかもしれないとすら思えてくる。
あの佐久間さんが漫画を読んで泣くなんて、イメージと違う。
そう思うのに、朝の佐久間さんの赤くなった目が頭に焼きついている。思い出してまた胸が高鳴った。
佐久間さんはいつも仕事は完璧で、自分にも他人にも厳しい。たまに笑ってくれることはあるものの、眉間に皺を寄せる表情がデフォルト。だからあんな風に感情を溢れさせているところは見たことがなかった。
もっと、佐久間さんの色んな顔を見てみたい。
「でも仕事中はいつも通りだったし」
私は所詮ただの部下で、佐久間さんのことを深く知れるような特別な立場にはなれない。
心臓がつねられたように痛んだ。昨日まではそんなこと、望んですらいなかったというのに。
ため息をついて、駅のホームで地下鉄が来るのを並んで待つ。
暇つぶしにスマホでSNSのタイムラインをぼんやり眺めていた時、佐久間さんから仕事用のチャットに連絡がきた。送られてきた文面を読んだ瞬間、私はひっくり返った声を上げそうになった。
【土曜日、昼飯も一緒に食うのどう?】
さっきまでしょんぼりしていたはずの心臓がバクバク飛び跳ねている。
いや、これは時間的にランチも誘わないと不自然だからであって、他意はないはず。勘違いしてはいけない。
そう言い聞かせても心は言うことを聞いてくれなくて、まったく平常心になれなかった。
しまいには商談の時間に遅れそうになって、佐久間さんの怒号が飛んでくる始末。
「榎本! おまえ、契約台無しにするつもりか!」
気もそぞろになっていた私が悪いのだけれどいつも通り厳しい佐久間さんの声に、私は冷や水を頭からぶっかけられた気分になった。
なんとか気持ちを切り替えて商談は乗り越えたものの、期待でパンパンに膨らんでいた気持ちはすっかり萎れて、私はトボトボと帰路に着いた。
勝手に舞い上がってしまったけれど、ただ映画を見に行くだけ。佐久間さんにとってはデートでもなんでもないのかもしれない。朝のあの時間は、篠嗣さんショックで私の頭がおかしくなって見せた幻覚だったのかもしれないとすら思えてくる。
あの佐久間さんが漫画を読んで泣くなんて、イメージと違う。
そう思うのに、朝の佐久間さんの赤くなった目が頭に焼きついている。思い出してまた胸が高鳴った。
佐久間さんはいつも仕事は完璧で、自分にも他人にも厳しい。たまに笑ってくれることはあるものの、眉間に皺を寄せる表情がデフォルト。だからあんな風に感情を溢れさせているところは見たことがなかった。
もっと、佐久間さんの色んな顔を見てみたい。
「でも仕事中はいつも通りだったし」
私は所詮ただの部下で、佐久間さんのことを深く知れるような特別な立場にはなれない。
心臓がつねられたように痛んだ。昨日まではそんなこと、望んですらいなかったというのに。
ため息をついて、駅のホームで地下鉄が来るのを並んで待つ。
暇つぶしにスマホでSNSのタイムラインをぼんやり眺めていた時、佐久間さんから仕事用のチャットに連絡がきた。送られてきた文面を読んだ瞬間、私はひっくり返った声を上げそうになった。
【土曜日、昼飯も一緒に食うのどう?】
さっきまでしょんぼりしていたはずの心臓がバクバク飛び跳ねている。
いや、これは時間的にランチも誘わないと不自然だからであって、他意はないはず。勘違いしてはいけない。
そう言い聞かせても心は言うことを聞いてくれなくて、まったく平常心になれなかった。