鬼上司のギャップ沼は落ちたら抜け出せない
「小林」
変なレッテルが貼られそうになって焦っていると、背後からヤクザみたいなドスの効いた声が聞こえてきた。
小林さんの顔がサッと青くなる。緩みきった私の表情筋もすぐに引き締まった。
おそるおそる振り向くと、課長の佐久間瑤さんが仁王のごとく立っていた。朝から眉間に皺を寄せて、とんでもなく機嫌が悪そうな顔をしている。まあ朝に限らず佐久間さんはこの表情がほぼデフォルトだから、本当に機嫌が悪いかは表情だけでは判断できない。
「先週商談に行ったA社に後追いの連絡したか?」
「いえ、まだです……今検討いただいているところかと」
「だったら一回連絡しろ。ついでにシステムイメージも送って、先方のリアクション見てみろ。迷ってそうだったら、アポイントねじ込んででも説得。なるべく今日中にやれよ」
「きょ、今日中? さすがにシステムイメージを今日中には……他の案件もありますし……」
小林さんが青い顔で言うと、佐久間さんは鬼のような形相で睨んだ。見ているだけの私も怖い。
「完璧なものを作れって言ってるわけじゃない。既存システムをベースに要望機能のラフを作成するだけでいい。それくらいすぐできるだろ。まずは手を動かして、間に合わない時はまた相談してくれ」
「は、はぃ……」
「あと榎本、ミーティングまでに商談資料ちゃんと作っとけよ」
「はい!」
小林さんと私は、背筋を伸ばしてすぐさまパソコンに向き直った。別の方向からまた佐久間さんの低い声が聞こえる。
変なレッテルが貼られそうになって焦っていると、背後からヤクザみたいなドスの効いた声が聞こえてきた。
小林さんの顔がサッと青くなる。緩みきった私の表情筋もすぐに引き締まった。
おそるおそる振り向くと、課長の佐久間瑤さんが仁王のごとく立っていた。朝から眉間に皺を寄せて、とんでもなく機嫌が悪そうな顔をしている。まあ朝に限らず佐久間さんはこの表情がほぼデフォルトだから、本当に機嫌が悪いかは表情だけでは判断できない。
「先週商談に行ったA社に後追いの連絡したか?」
「いえ、まだです……今検討いただいているところかと」
「だったら一回連絡しろ。ついでにシステムイメージも送って、先方のリアクション見てみろ。迷ってそうだったら、アポイントねじ込んででも説得。なるべく今日中にやれよ」
「きょ、今日中? さすがにシステムイメージを今日中には……他の案件もありますし……」
小林さんが青い顔で言うと、佐久間さんは鬼のような形相で睨んだ。見ているだけの私も怖い。
「完璧なものを作れって言ってるわけじゃない。既存システムをベースに要望機能のラフを作成するだけでいい。それくらいすぐできるだろ。まずは手を動かして、間に合わない時はまた相談してくれ」
「は、はぃ……」
「あと榎本、ミーティングまでに商談資料ちゃんと作っとけよ」
「はい!」
小林さんと私は、背筋を伸ばしてすぐさまパソコンに向き直った。別の方向からまた佐久間さんの低い声が聞こえる。