クールな敏腕上司の素顔が甘すぎて蕩けそうです。

①⓪

「ごめん。これはセクハラだよな。歳の離れた妹がいるから癖で」

「いえ……お気になさらず。妹さんがいるんですね」

「そうそう、もう大学生だけどね。蒼井と歳が近いから勝手に親近感湧いてたのかも」

 砕けた様子の桐谷に、翠葉も少しずつ肩の力が抜けてきた。隣を歩いている桐谷をこっそりと見る。

 誰も知らないプライベートを偶然にも見てしまい、なんだかいけないものを見てしまった気持ちになった。

 このままホテルに帰るのが惜しくなってしまう。もっと知らない桐谷が見たいと思うのは、我が儘だろうか。
 
「アイス、ホテルの中庭のベンチで食べていく?」

「そんな場所があるんですか?」

「小さな公園っぽくなってて、出張に来た時の俺の密かな楽しみなんだ」

 深夜の中庭にどんな楽しみがあるのだろうと思って付いて行ってみると、そのベンチに座って夜空を見上げると、満天の星空が広がっているのだった。

「星の数が違いますね」

「地方ならではだろう。本社勤務だと周りはビルばっかりだし、ここはホテル内の灯りも届かなくて余計に星が鮮明に見えるんだ」
 ここは特等席なのだと夜空に顔を向けたまま桐谷が言う。

 同じ景色を見ながら、同じアイスを食べていると、なんだか特別な時間を過ごしているような気分になる。
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