クールな敏腕上司の素顔が甘すぎて蕩けそうです。

①③

「なんですか、それ」

「だから、もし俺と翠葉が付き合ったらっていうシュミレーション」

(翠葉って名前、知ってたんだ)それだけで、心臓が爆発しそうなくらい跳ね上がった。

「因みに俺の名前は知ってる?」

「勿論ですよ。桐谷涼真さん」

「声が小さくなるってことは、自信がないのかな」

「あります! 涼真さんですよね!」

「正解」

 手の平を向けられ反射的に自分も手の平を向けると、ハイタッチをすると見せかけて、指を絡めて握られた。

「やっと、いつもくらい喋るようになったな」

「もしかして、私の緊張を解そうとして?」

「溌剌としていた方が、らしい(・・・)ぞ」

 やはり期待してはいけなかった。わざわざ元気を出させるために、気のある素振りを見せなくてもいいじゃないか。だからストーカー被害にも遭うんだと責めてやりたくなった。

「大丈夫です! 明日から猛烈に働きますから! 手、離してください」

「嫌だって言ったら?」

「そんなだから、好きでもない人から狙われるんですよ」

「誰にでもするわけないだろう」

「私だったら揶揄い甲斐があるからですか? だから、こんなことするんですか? じゃあ私が好かれてるって勘違いしたらどうするつもりですか? 責任取ってくれるんですか? 私、自惚れますよ!?」

 悔しくて、質問責めにしてしまった。

 この場から逃げ出したくて手を振り解こうとしたが、桐谷は真剣な表情のまま離そうとせず、更に力を込めて見詰めてくる。

「……自惚れてもいいんじゃない」

 真剣に言うものだから、言い返す言葉を失った。
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