クールな敏腕上司の素顔が甘すぎて蕩けそうです。

 週末は緊張で寝られなかった。
 なにせ課長補佐クラスの人と出張に行くは初めてなのだ。大体は一人か、誰かいるとしても長瀬の場合が多い。

 自分を評価してくれているからこそ失敗したくないし、桐谷に恥をかかせるわけにもいかない。
 渡された資料を何度も確認していたら、あっという間に待ち合わせの時間になっていた。

 駅で落ち合った桐谷は、今日もビシッと身なりを整えて約束の五分前に現れた。髪の毛一本の乱れもない。スレンダーな体型に細身のスーツを着こなしている彼はまるでモデルだと思いながら目で追っていると、桐谷は翠葉を見て目を瞠った。

「……体調悪かったら前もって言ってくれないと」
 目の下に隈を作り、化粧ノリも悪い。しっかりと姿勢を正せていると思っているのも自分だけのようだ。

 桐谷とは正反対の自分に、出発前からマイナスなイメージを作ってしまい、正直に緊張であまり寝付けなかったと打ち明けた。

 桐谷が部下に圧かけていると遠回しに言っているように捉えられないか心配したが、それは杞憂に終わった。
「ほら、荷物運ぶから」と、翠葉の荷物をさっさと運び、窓際の席に座らせてくれた。

「移動時間に寝られるだろうし、今日はホテルのチェックインだけだから、着いたらゆっくり休みなさい」

「すみません。明日からは頑張ります」
 肩を竦めて謝罪する。そんな翠葉に桐谷は「身構えすぎなくていい」と宥めてくれた。

 会社でいる時よりも物腰が柔らかいと思うのは気のせいだろうか。
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