クールな敏腕上司の素顔が甘すぎて蕩けそうです。

 移動中も隣に桐谷がいると落ち着かず、きっと眠れないと思っていたが、流石に二日も寝不足だったからかぐっすりと眠れた。

 新幹線が走り出してからの記憶がないことから、座って間もなく眠りに落ちたのだろう。目的の駅に着き、目が覚めた時に桐谷の肩を借りていたのだから更に気まずくなった。

 今日会ってから情けない姿しか見せていない。明日から挽回できるのか不安になる。
 しかし当の桐谷は特に気にする様子もなく、翠葉の荷物を当たり前に運び、ホテルに到着した。

 エレベーターで十二階まで上がる。
「俺が1208号室で、蒼井は1215室な」
 カードキーを手渡され、桐谷の斜め前の部屋へと入った。

 部屋のドアを閉めた次の瞬間、全身の力が抜け、頓狂な呻き声を上げる。

「もぉぉぉぉやだぁぁぁ……。これなら別々に来るんだった。桐谷さん、絶対に迷惑だったよね」
 荷物を持たせ、肩に凭れられ、何もかも世話をさせられたのだ。どのタイミングで怒られても仕方なかった。それをしなかったのは、彼の器の広さだ。

 スーツケースを開けもせず、靴を脱いでベッドにダイブした。お行儀が悪いが、自分の失態を思い出すほど羞恥心に苛まれ、あがきたくもなる。

 眠気はとっくに覚めた。
 明日までに謝罪しなければ、仕事にも悪影響が及ぶ。そうなれば行動は早いに越したことはないのだが、どうにも体が動かない。

 羽依の言葉を思い出し、桐谷からの冷たい視線を想像して身震いをしてしまった。
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