クールな敏腕上司の素顔が甘すぎて蕩けそうです。

 自分の女子力の無さに内心ショックを受けていると、桐谷は翠葉が持っているカゴを取り「ついでだから一緒に買うよ」とレジに向かう。

「そんな、大丈夫です! 自分で買います。アイス……そう、アイスクリームを買いに来たので、今から選ぶんです。だから、どうかお気遣いなく」

 先に帰ってくださいという意味で言ったつもりが、桐谷はそのまま売り場を移動してしまった。
 これではアイスも買って欲しい人ではないか。ここまでくれば今更要らないとも言えず、いちご味のアイスを一つ選びカゴに入れた。

「俺も好き。このアイス」
 もう一つ、同じものが追加される。

『好き』という言葉に過敏に反応してしまい、卒倒しそうになるのを気合いで耐えた。

 桐谷はさっさとレジを済ませてホテルへと向かう。
 一歩後ろから付いて歩く。隣に立つのも気まずいし、かといって距離を空けるのも避けているみたいで感じが悪い。

 なんとなく二人の服装が似ているのを、周りが見たらなんて思うのだろうと想像しながら桐谷の背中を見上げる。
 話しかけたいが、翠葉は一呼吸おいて平常心を取り戻す必要があった。

 というのも、さっきのコンビニで桐谷がアイスを取る際にはっきりと見てしまったものがあった。見てしまったというか、無いと確認してしまったと言う方が正しい。

 左手の薬指に、指輪がなかった――。
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