鯨のうた
Story.8
年末年始休暇を終え、新年早々に仕事が始まった。
幸せな年末年始を過ごしたわたしは、まだ頭が完全に仕事モードに切り替わっておらず、何だかぼんやりしてしまう。
そんな時―――
「おいっ、何ボーッとしてんだよ」
そう言って、わたしのデスクにブラックコーヒーを置いたのは、航だった。
「えっ、あぁ···ごめん。休みボケかな」
「ふーん。とか言って〜、どうせ誰かさんの事考えてたんじゃないのか?」
そう言ってわたしをからかう航は、悪戯な笑みを浮かべる。
わたしは半分図星をつかれ「うっ」となったが、平然を装い「別に···。さぁ、仕事仕事」と言って、パソコンの液晶と向き合った。
「図星かぁ」
「うるさいなぁ」
「まぁ、千衣が幸せならいいや。じゃ、俺は新年の挨拶回り行って来るわー」
航はそう言うと、手をひらひらさせながらオフィスをあとにした。
(航···ありがとう)
わたしは心の中でそう呟きながら、航が持って来てくれたブラックコーヒーに口をつけた。
お昼休憩の時間になると、わたしはいつものあの場所へと向かった。
優作さんと二人だけの秘密の休憩室。
今日はわたしがお弁当を作って持参した。
「おぉ〜!手作り弁当最高」
「ありきたりなおかずばっかりですけどね」
「作ってもらえるものは、何でも嬉しいよ!」
そう言って、優作さんは「いただきます」と手を合わせた。