鯨のうた
「そういえば···、どうしますか?わたしたちの関係···、社内では―――」
わたしがそう訊くと、玉子焼きを頬張る優作さんは「ん?」と言ってこちらを向いた。
「一応、優作さんにも確認しとこうと思って」
「俺は別に隠すつもりはないし、バレても構わないけど···もし、知られて千衣が仕事しづらくなるなら、秘密にしてても構わないよ」
「いえ、わたしも隠すつもりはありません。それに、一時期···噂も広まったから、今更かなって」
「まあ、確かにそうだね」
そう言ってわたしたちは笑い合い、確認を済ませたところでわたしもお弁当をいただく。
やはり優作さんとの時間は落ち着くし、心地良い。
優作さんは「寒くない?」とわたしに気遣いながら、電気ヒーターをわたしの足元の方にずらしてくれた。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「冬が終わって雪が溶けたら、また屋上に行こうね」
「はい!」
今のわたしは、何もこわくなかった。
わたしには、優作さんが居てくれる―――
それだけで心強くて、自分自身も強くなれた気がした。
しかし、不安というものは、ある日突然やってくる。
その事のわたしは、すっかり忘れていたのだった。