鯨のうた
それから23時を過ぎ、わたしは時間ばかりを気にしてしまっていた。
(どうしよう、もう寝ちゃおうかな···。って言っても、気になって寝られるか分かんないけど)
そう思いながら、寝る支度をしようとした時だった。
――ブブッ
テーブルの上に置いていたスマートフォンが振動した。
その音にわたしはすぐにスマートフォンを手に取る。
新着メッセージは、優作さんからだった。
『やっと終わったよ。まだ起きてるかな?』
優作さんからのメッセージにわたしはホッとする。
そしてすぐに『起きてますよ』と返信をした。
すると―――
『千衣に会いたい。これから会いに行ってもいいかな?』
そのメッセージにわたしが"NO"と言うわけもなく、それから30分後に優作さんが我が家にやって来た。
「こんな時間に突然ごめんね」
優作さんはそう言うと、玄関を入ってすぐにわたしを抱き締めた。
ほのかに香るお酒のにおい。
中原専務にかなり飲まされたのでは···と心配していたが、そこまでではなさそうだ。
「どうしたんですか?」
わたしは優作さんの背中に腕を回しながら訊いた。
優作さんはわたしを離そうとせず、ただ強く抱き締め「会いたくて、我慢できなかった」と囁いた。
何があったのだろう。
中原専務に何か言われたのだろうか。
わたしは優作さんに訊きたい事が山程あったが、その時はただ黙って優作さんを抱きしめ返した。
会いたかったのは、わたしも同じだ。
だから今は、こうして会いに来てくれただけで嬉しかった。