鯨のうた
日が落ちてすっかり涼やかな風がカーディガンを通り、肌に秋を感じさせる空の下、わたしは雨龍課長と『そよ風』と書かれた暖簾をくぐった。
そこは、カウンター席にテーブル席が4席の小さな居酒屋だった。
席を埋めているのは、スーツを着た仕事帰りのサラリーマンらしき人たちばかりだ。
「いらっしゃいませぇ!」
そう言って迎えてくれたのは、三角巾を被ったエプロン姿の40代くらいの女性の店員さん。
その女性の店員さんは、指で"2"を表しながら「2名様ですか?」とわたしたちに確認した。
「はい」
雨龍課長がそう返事すると、女性の店員さんは「今テーブル席がいっぱいで、カウンターでしたら、すぐご案内できますけど」と言った。
「どうする?」
わたしの方に顔を向け、雨龍課長は言う。
わたしは「わたしはカウンター席でも構いませんよ」と答えた。
「カウンター席、いいですか?」
わたしの返答を聞き、雨龍課長は女性店員さんにそう訊く。
すると、女性店員さんは笑顔を見せ「はい、ではこちらへどうぞ!」と言い、わたしたちはカウンター席へと案内され、席についた。