鯨のうた

「娘には、好きな人と結婚して幸せになってほしい。父親のわたしとしても、娘の相手が雨龍くんなら、安心できるんだよ」

勝手に一人でペラペラと話を進めていく中原専務にわたしは呆れてしまう。

人の気持ちを無視して、勝手な事ばかり―――

「だから、雨龍くんには露草さんと別れて、娘と婚約してほしいと頼んだんだ。そうしてくれたら、部長への昇格も保証すると伝えた。雨龍くんにとって悪い話じゃないし、その方が雨龍くんの為にもなる」

娘さんとの婚約をすれば、部長へ昇格?―――
それが優作さんの為になる···?

わたしは···どうするべきなのだろう。

わたしはこのまま大人しく、身を引けばいいの?

やっと見つけた幸せを、簡単に手放せって?

でもそれは、単なるわたしの我が儘になってしまうのだろうか···―――

「もちろん、露草さんにだってタダで別れてほしいだなんて言わない。営業部の中での昇進でも構わないし、露草さんなら秘書課への異動も可能だよ?秘書課の方が給料も上がるしね!」

営業部内での昇進?
秘書課への異動?

そんなの、一ミリも嬉しくない―――

わたしはそんな事を望んでいない。

わたしはただ、このまま優作さんと一緒に居たいだけ···

一緒にご飯を食べて、他愛もない話をして笑い合って、抱き合って、キスをして、愛を確かめ合って···―――

わたしにそんな幸せは、許されないの?

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