鯨のうた
ところが、その凄まじい視線たちは、思いもよらぬ程あたたかいものだった。
「雨龍の奴、やってくれるよなぁ〜!あんな大勢の社員の前で、千衣ちゃんに愛の告白とか男前すぎるぜぇ!」
胸の前で腕を組みながら、そう言ったのは優作さんと同期の国枝さんだ。
それから周りの人たちも―――
「雨龍課長、かっこよかったよねぇ!」
「何かドラマ観てる気分だったぁ〜!」
「わたしもあんな事、言われてみたいわぁ〜!」
もっと冷たい雰囲気になると思っていたのに、思わぬあたたかさにわたしは戸惑った。
すると、「千衣」と航がわたしに歩み寄って来た。
「···航」
「なーにそんな不安そうな顔してんだよ!大勢の前であんな愛の告白されといて!」
「えっ!いや、あれは!」
「良かったじゃん。雨龍課長がハッキリ言ってくれてさ。いや〜さすがの俺も、あそこまで出来ないわ。千衣が雨龍課長を選んだ理由に納得した」
航はそう言うと、わたしに微笑み掛けてくれた。
何だかあんなに棘々していた航が丸くなってしまったようで、航と言い合ってきたわたしは気が抜けてしまう。
「まあ、正直···このまま何も無しでは済まないかもしれないけど、俺は千衣と雨龍課長を応援してるから。だから、元気出せよな」
航はそう言って、親指を立てて見せた。
「···うん。航、ありがとう」
「あ、今の俺、かっこよかった?」
「はぁ?その一言でかっこよさ激減したわ」
「うわぁ〜!マジかよぉ!」
そんな事を言い合い、わたしたちは笑った。
航のおかげで気持ちが少し軽くなった。
わたしもしっかりしないと。
どんな結果になったとしても、わたしは優作さんについていく。
わたしにとっても優作さんは大切な人で、優作さんと過ごす時間は、わたしにとっても宝物だから―――