鯨のうた
「ん!美味しい!」
わたしが牡蠣の美味しさに感動すると、雨龍課長は何故か自慢げに「でしょ?」と言った。
「いや、雨龍課長はこれ食べた事ないんですよね?」
「うん、ない」
「それなのに、"でしょ?"って」
わたしがそう言ってクスッと笑うと、雨龍課長は優しく微笑みながらテーブルに腕を置いた。
「露草さんってさ、そんなふうに笑う人だったんだね」
「えっ?どういう事ですか?」
「ほら、露草さんとこうしてちゃんと話すの初めてだから。仕事が出来るクールビューティーな印象しかなかったから」
雨龍課長の言葉に「クールビューティー?」とわたしは笑う。
すると、雨龍課長は首を傾け、そんなわたしの顔を覗き込むと「こりゃあ、モテるわけだ」と何故か一人で納得していた。
「いやいやいや、モテませんよ」
「いーや、それは露草さんが気付いてないだけだよ。このギャップに男たちはやられてるんだなぁ〜」
そんな事を話していると、先程の女性店員さんが注文を取りに来て、雨龍課長は生ビール、わたしはレモンサワーを注文し、料理も雨龍課長のオススメを数品注文した。
それからお酒がすぐに運ばれてきて、雨龍課長とわたしは、「お疲れ様です」と静かに乾杯した。
「んー、沁みる〜」
レモンサワーを飲んでわたしがそう言うと、雨龍課長はそんなわたしを見て、テーブルに頬杖をつき、嬉しそうにわたしの顔を眺めてきた。
「美味しそうに飲むねぇ」
「美味しいですからね」
「やっぱりギャップだね。男はギャップに弱いから」
「いや、だからぁ、そんな事ありませんって」
わたしがそう言いながらレモンサワーのグラスを置くと、雨龍課長は「露草さんは、分かってないなぁ〜」と、ちょっと鼻に付く言い方をした。