鯨のうた
その後、わたしは雨龍課長とお酒を飲みながら、仕事の話や他愛もない話をして、22時前にはお店を出た。
広い通りに出たところで雨龍課長がタクシーを拾ってくれて、わたしはそれに乗り、雨龍課長と別れて帰宅した。
わたしの自宅は、5階建ての何でもない普通の1DKのマンション。
そこの201号室に住み始めて、5年になる。
誰も居ない真っ暗なリビングに明かりを灯し、仕事の疲れとお酒で怠くなった身体を二人掛けソファーに放り投げると、天井を見上げた。
「世界一、孤独な、鯨···―――」
わたしはぽつりと独り言を呟く。
世界一、だなんて思わないけれど、わたしも孤独だ。
もしかしたら、雨龍課長も自分自身が孤独だと思っているのかもしれない。
いや、"孤独でいようとしてる"のかもしれない。
真相は分からないけれど、わたしは雨龍課長から何故か"寂しさ"を感じた。
(あんなにみんなから好かれて、人気者でも寂しさを感じるものなんだなぁ)
「一生懸命鳴いても、誰にも声が届かない···―――」
そんな事を呟きながら、わたしはしばらくの間、ソファーの上から動く事が出来なかった。