鯨のうた

***


週末の金曜日。
わたしは仕事帰りに雨龍課長に連れて行ってもらった、あの"そよ風"という居酒屋へ向かっていた。

あの一人の食事の"物足りなさ"の真相を突き止めたいと思ったのだ。

「いらっしゃいませ〜!」

暖簾をくぐり、店内へ入ると、先日来店した時と同じ女性店員さんが迎えてくれた。

「お一人様ですか?」
「はい」
「では、カウンター席へどうぞぉ!」

そう言われ、わたしは前回と同じカウンター席へと座った。

店内は今日も仕事帰りのサラリーマンたちで埋め尽くされている。
今日は金曜日なのもあってか、前回よりも賑わっていた。

「ご注文はどうされますか?」

おしぼりとお通しを運んで来てくれた女性店員さんが訊く。
わたしはメニュー表をチラッと見たあとで、レモンサワーにオニオンサラダとタコの唐揚げ、そして豚串を注文した。

それからレモンサワーが先に運ばれてきて、わたしは一人で「お疲れ」と自分に向けて呟き、レモンサワーを喉に流し込んだ。

仕事終わりのレモンサワーは、やはり美味しい。

「はぁ···」

無意識に自然と出てくる溜め息。
わたしは壁に書かれているオススメ品を眺め、それから店内を見回しながら注文しているメニューを待った。

そして、一番最初に運ばれてきたのはオニオンサラダ。
玉ねぎ臭さのない新鮮な玉ねぎにサッパリとした爽やかなドレッシングがかかっている一品だ。

「うん···美味しい」

そうしてオニオンサラダを頬張っていると、「お待たせしましたぁ!」と言う威勢の良い女性店員さんの声と共にお目当ての豚串が運ばれてきた。
< 24 / 123 >

この作品をシェア

pagetop