鯨のうた
「露草さん、よく一人で外食したりするの?」
「んー、まあ、わたしは基本的にいつも一人なので。お昼休憩もいつも社食で一人で食べてますし」
「そうなんだ」
「そういえば、雨龍課長は?普段、社食には居ないですよね?誰かと外に食べに行ったりしてるんですか?」
わたしがそう訊くと、雨龍課長は丁度注文を取りに来た店員さんに「生一つ」と頼んだ後、スーツの上着を脱ぎ始めた。
「いや、外に食べには行かないよ。俺も基本は一人で過ごしてるかな」
そう言って、雨龍課長は上着を椅子の背もたれに掛けた。
「社食にも居ない、外でもないなら···、いつもどこにいるんですか?」
「···実は、屋上で独りでボーッとしてる」
「屋上?うちの会社って、屋上行けるんですか?」
「いや、許可が出てるのかは分かんない。けど、鍵が空いてるから良いのかな〜って、勝手に思ってる」
きっちりしていると思っていた雨龍課長の意外な一面にわたしはクスッと笑うと、「それ、実はダメでバレたらどうするんですか?」と言った。
すると、雨龍課長は「その時はその時で謝るだけだよ」と言って笑っていた。
「―――でも、まさかここで雨龍課長と会うとは思わなかったです。よく一人でも来るんですか?」
「んー···、まあ、たまにね。でも今日は、実は···露草さんを誘おうと思って、帰りに営業部を覗きに行ったんだ」
「―――えっ?」
「でも姿が見えなかったから、クソぉ〜帰っちまったかぁ〜って思いながら、一人で来てみたら露草さんが居たから、凄く驚いた」
雨龍課長の言葉に驚き、どう反応したら良いのか分からず、わたしは笑って誤魔化した。
(雨龍課長が···わたしを誘おうとしてくれた?)
その事に素直に嬉しさが込み上げてきて、誤魔化し笑いから、わたしは自然に笑みが溢れていた。