鯨のうた

扉が開いた瞬間、太陽の陽射しで目が眩む。
そこには、秋晴れ空が広がっており、程良い風が吹いていた。

初めて来る会社の屋上。

しかし、そこに雨龍課長らしき人影は見当たらなかった。

(今日は来てなかったかぁ···)

残念に思いながら、わたしは柵の手前まで歩いて行き、そこからの景色を眺めた。

目の前には、大通り公園が広がっており、この街を見渡す事が出来る。
ちょっと先にはテレビ塔も見えた。

それから何気に後ろを振り向くと、屋上の端の方に白いベンチが置いてある事に気付く。
わたしはベンチに歩み寄って行くと、そこにゆっくりと腰を下ろした。

雨龍課長は、いつもこの屋上でどのように過ごしているのだろう。

この街並みを眺めているのか。
このベンチに座り、空を見上げているのか。

そして、何を思っているのだろう―――

わたしはベンチに座りながら、雨龍課長の事を考えた。

"雨龍課長と付き合っいる"という噂···
もし、それが本当だったなら―――

(何て···わたしは、何を考えているのだろう)

そんな事を考えてしまう自分に呆れて笑い、わたしはベンチから立ち上がった。

そして、少し早いが営業部のオフィスに戻ろうと屋上をあとにしたのだった。
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