鯨のうた
最近の航は、何だか様子がおかしい。
雨龍課長との関係を確認してきたり、社員旅行に連れて行こうとしたり―――
(何を考えてるんだろう···)
わたしはそんな事を疑問に思いながら、発注していた事務用品の受け取りをし、各指定の場所に片付けていった。
お昼休憩になると、わたしは社員食堂へ行くためにオフィスを出た。
そして、エレベーター待ちをしていると、上の階から下りてきたエレベーターに雨龍課長が乗っているのが見えた。
雨龍課長は5階で降りて来ると、小さく片手を上げながら、わたしの前まで歩み寄って来て「お疲れ」と言った。
「お疲れ様です」
「これから社食行くとこだったの?」
「はい」
「おー、間に合って良かった。今日は露草さんを誘おうと思って、ここまで下りてきたんだ」
「あ、屋上ですか?」
わたしがそう訊くと、雨龍課長は「いや」と言ったあと、「そろそろ肌寒くなってきたから、例のあの場所に案内しようと思ってね」と言い、まるで悪戯な少年のような笑みを浮かべていた。
それから雨龍課長とエレベーターに乗り、着いたのは7階。
会議室や応接室がある階だ。
「7階に休憩を取れるような場所なんて、ありましたっけ?」
わたしがそう訊くと、雨龍課長はある一つのドアの前で立ち止まった。
「俺の第二の休憩場所は、ここ」
そう言って雨龍課長が指差した場所は、"第3資料庫"だった。