鯨のうた
まさか予定の相手を当てられ、わたしは目を見開き航を見上げた。
すると航は、わたしの反応から悟ったのか「マジかよ」と言った。
「―――わたしが誰と何をしようが、関係ないでしょ?」
そう言って、わたしは誤魔化そうとしたが、航はそれを許してくれなかった。
「関係なくねーんだよ!」
「はあ?!関係ないでしょ」
「千衣の事が好きなんだよ」
(―――え?今、何て言った?)
航の言葉にわたしは、その場に立ち止まる。
航はわたしの一歩前で足を止めると、ゆっくりとこちらに振り返った。
「俺は千衣が好きだ。だから···、関係なくないんだよ」
突然の航からの告白に、わたしは動揺を隠せなかった。
(え、航が···わたしを、好き?)
頭の中が混乱して言葉が出て来ない。
すると航は、そんなわたしの目の前まで歩いて来た。
「···だから、雨龍課長との予定はキャンセルしてほしい。」
「な、何言ってるのよ···」
「好きな女が他の男と予定があるなんて、黙ってられるわけないだろ」
「でも···もう、約束しちゃったし」
「相手が雨龍課長だって、認めるんだな」
つい話しの流れから、雨龍課長との予定だという事を認めてしまう形となり、わたしは(あちゃー···)と自分の失態に目を瞑った。
「俺は···相手が誰だろうと、負けたくない」
今の航の顔を見ることが出来ない。
航は今、どんな顔をしているんだろう―――
すると、航は「社員旅行と同じ日の10時」と言い出した。
「駅前の赤いオブジェ前で待ってる」
航はそう言うと、前を向き直って歩き始めた。
「あっ、ちょっと!航!」
わたしはそう呼び止めたが、航は足を止めることなく行ってしまった。