鯨のうた
それから雨龍課長は、中原専務から頂いたという白ワインを開け、ワイングラスに注いでくれた。
「乾杯」
その言葉でわたしたち乾杯をし、ワインに口をつける。
甘口で普段あまりワインを飲むことがないわたしでも、とても飲みやすいワインだった。
「ん、美味しい」
「飲みやすいワインだね」
「高そうなワインですもんね」
そんな会話を交わした後、早速雨龍課長の料理を戴く。
料理はどれも美味しくて、中でもチキンのトマト煮込みはお肉がホロホロで柔らかく、わたし好みの味付けだった。
「んー!めちゃくちゃ美味しいです!」
「本当?良かった。頑張った甲斐があったなぁ」
「こんな美味しいもの作られちゃ、わたしも頑張らなきゃですね」
「そんな、手の込んだものとかじゃなくていいんだよ?」
「いやいや、だって···こんなに美味しいもの出されたら、気を抜くわけにはいかないじゃないですかぁ」
わたしがそう言うと、雨龍課長は「ははっ」と笑い、「普段作るものでいいんだよ。露草さんの普段のご飯が食べたい」と言った。
「それなら、かなり質素になっちゃいますよ?」
「いいんだよ。露草さんが作るものなら、何でも食べたい」
そんな話から、わたしは「雨龍課長が食べられないのは、牡蠣くらいですか?」と苦手な食べ物を聞き出そうとする。
雨龍課長は「んー」と少し考えた後に「牡蠣以外は特にないかも」と言って親指を立てた。
「わかりました。じゃあ、献立考えておきますね」
そう言って、わたしは雨龍課長に親指を立て返して見せた。
雨龍課長とのご飯、会話、そしてその空間はわたしにとっては何よりも貴重で楽しく、落ち着く瞬間だ。
ずっとこの時間が続けばいいのに―――
そう願ってしまう程、わたしは雨龍課長の傍に居たいと思い始めているのだ。