鯨のうた
「竹浪くん、今回の社員旅行は欠席らしいね。毎回参加してるのに、どうしたんだろ」
雨龍課長の言葉に思わずお茶を吹き出しそうになる。
慌てて口元を押さえたわたしは「さ、さあ···何か予定でもあったんじゃないですか?」と言った。
「うちの課で竹浪くん、結構人気あってね。竹浪くんが不参加って聞いて、みんな残念がってたよ」
(そうなんだ···、総務では航、人気あるんだ···)
そんな事を考えていると、雨龍課長はお茶が入ったマグカップをテーブルに置き、ふとわたしの方を見た。
「でも竹浪くん自身は···、露草さんに好意があるみたいだね」
まさかの雨龍課長の言葉に「えっ?!」と、わたしは動揺を隠せなかった。
「そ、そんな事ないと思いますよ?」
「え?だって、端から見てたら、竹浪くん···露草さんのことばっかり見てるし、他の人と接する時と態度が違うよ?」
「そうなんですか?···あ、でも、ほら、同期だし···元担当だったんで、話しやすいってだけじゃないですかね?」
わたしはそう言い、笑って誤魔化した。
すると雨龍課長は、「そうなのかぁ···」と言って宙を仰いだ。
端から見たら、そういう風に見えていたなんて―――
わたしは違う意味でドキドキしながら、お茶を飲み、自分を落ち着かせようとした。