鯨のうた

「遺書が見つかって、そこには···仕事の事で苦しんでたと、書き綴られていた。でも、俺···彼女が仕事の事で悩んでたなんて、全く知らなかった―――気付きもしなかった。ずっと傍にいたはずなのに、俺は彼女の何を見てきたんだろうって···自分を責めた。俺が彼女のSOSに気付けていれば···こんな事にはなってなかったのかもしれないのに―――」

悔やむ雨龍課長の姿は、とても痛々しかった。

そんな重い過去を背負っていたなんて―――
自分を責め続けていたなんて―――

あまりにも苦しすぎる。

「それから俺は、恋をするのをやめた。自分に誰かを愛する資格なんて無いと思ったから。だから、今まで···お見合い話は全部断ってきたし、好意を寄せられても、全て気付かないフリをしてきたんだ」

雨龍課長の言葉を聞き、わたしは(そういう理由があったんだ···)と女性を遠ざけてきた真意を知った。

すると雨龍課長は、ふと顔を上げ、わたしの方に顔を向けた。
その表情は先程の切ないものとは違う、切なくも穏やかさを感じる優しい表情だった。

「でも···、露草さんと話すようになって、同じ時間を過ごしていくうちに···、女性を拒み続けてきたはずの俺の心が、解れていっている事に気付いたんだ。露草さんは閉ざしていた俺の心を温めて、溶かしてくれたんだよ···。俺は···露草さんに惹かれてる―――そう確信した」

(わたしなんかが···雨龍課長の心を温める事ができていた?)

信じられない―――

男運がなくて、騙され続けるようなわたしが?
何の取り柄もないわたしが?

「だからさ···、"男はこりごり"だって思ってるかもしれないけど···、俺にチャンスをくれないかな?千衣―――」
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