鯨のうた
そして、そんな会話の中、わたしの隣ではつまらなそうな表情を浮かべる航が一人で生ビールを飲み干している。
(自分から誘ってきたくせに、何でそんなつまらなそうなの?)
わたしはそんな事を思いながら、レモンサワーに口をつけ、目の前にあったフライドポテトをつまんで食べた。
すると、テーブル席の方から「おい!国枝ー!こっち来いよ!」と声が掛かり、国枝さんは嬉しそうにテーブルから離れて行った。
それをいい事に、航が「佐々木さん、他の人とも交流深めておいでよ。ほら、あっちの世代同じくらいの人たちのテーブルとか」と佐々木さんを移動するように促した。
先輩にそう言われて断ることが出来ない佐々木さんは「あ、そうですね。じゃあ、行って来ます」と言い、自分の飲み物を持って席を移動してしまった。
このテーブルには、航とわたしだけが残され、航は「ふぅ〜、ようやく二人になれた」と言って嬉しそうに微笑んだ。
「わざわざ、佐々木さんを移動させなくてもいいじゃない」
「佐々木さんは、もっと色んな奴と絡んで慣れてもらった方がいいんだよ」
航の自分勝手な行動にわたしが溜め息をつくと、航は「何だよ、そんなに俺と二人が嫌なのか?雨龍課長とは、二人きりなるくせに」と不満を漏らした。
雨龍課長の名前を出されると、ついドキッとしてしまうわたし―――
航のその言葉には、何も言い返せなかった。
すると航は「なぁ、」と話し掛けてくる。
わたしはレモンサワーのグラスを両手で持ち、ちょびっと飲むふりをしながら「何?」と平然を装った。