鯨のうた

雨龍課長と航の言い合いに、周りの人たちもざわめき出す。

すると雨龍課長は「こんなとこで言い合うのも周りの迷惑になるし、話すなら今度二人で話そう」と言い、それから「それじゃあ帰ろうか、露草さん」とわたしの方を向いた。

「あ、はい」
「おい、千衣!」

雨龍課長と帰ろうとするわたしを、航は止めようとする。

しかしわたしは、これ以上その場にいる事が気まずく「今日はもう帰るね。航は、みんなと二次会行きなよ。じゃあ、お疲れ」と航に言い残すと、雨龍課長に促され車の助手席に乗り、その場をあとにした。

しばらく沈黙が続き、静まる車内。
先に話し出したのは雨龍課長だった。

「忘年会は、どうだった?」
「あぁ···、まぁ、仕事の一環みたいなものなので」
「きっと、竹浪くんはずっと千衣の隣にいたんでしょ?」

雨龍課長の図星発言にわたしは苦笑いする。
そんなわたしの反応に雨龍課長は「やっぱり、そうだよねぇ」と言った。

「竹浪くんとは、何話したの?」
「大体は、航の愚痴を聞いてました。あとは···、クリスマスの話を···」
「クリスマス?」
「はい···、クリスマスに、俺との時間を作ってほしいって、言われて」

わたしがそう言うと、雨龍課長は眉間にシワを寄せ「うわ〜、先越されたかぁ〜」と言って口角を下げた。

(もしかして、雨龍課長もクリスマス···誘おうとしてくれてた?)

そんな自惚れな事を思いながら、わたしは雨龍課長の横顔を盗み見た。

鼻筋の通った綺麗な横顔。
夜の暗がりに時折、街灯の光が車内に差し込んで、それが雨龍課長の大人の色気を際立たせているような気がした。
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