鯨のうた

雨龍課長とのお昼休憩はあっという間に終わってしまい、午後の業務に戻る。

わたしの耳には、"鯨のうた"が残っており、(また聴きたいなぁ)と思いながら、午後を過ごした。

そして定時の30分前になると、外出していた航が慌てるように息を切らしながらオフィスに戻って来た。
余程急いで戻って来たのであろう。

航はわたしの方をチラッと見ると、自分のデスクに戻り一息ついていた。

それから定時になると、クリスマスで予定がある人が多いのか、みんないつもよりも忙しなく帰宅して行っているように感じた。

わたしはそんな周りの人たちを見送りながら、帰宅する支度をする。
すると、デスクから立ち上がった航がこちらに歩み寄って来るのを感じた。

航はわたしの傍まで来ると「千衣」と、わたしを呼んだ。

「今日の約束、忘れてないよな?」

そう言う航をわたしは見上げると、「···うん」と渋々返事をする。

航はパッと表情を明るくすると「まずは飯食いに行くぞ」と言い、歩き始めた。


そして、航について行き、着いた先はパスタ屋さん。
駅近にあるいつも混んでいるイメージしかない人気のパスタ屋さんだった。

「ここ来たことある?」

お店の前に辿り着いたタイミングで航が言う。
わたしは「いつも混んでるから、来たことない」と答えた。

「そっか、なら良かった」
「今日も混んでそうだけど···、結構待つんじゃない?」

わたしが不安気にそう訊くと、航は得意気な表情を浮かべ「予約してるから大丈夫」と答えた。
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