鯨のうた
館内を一通り周り、出口付近になってくると、今度はガラスの向こう側にペンギンたちの姿を見ることができた。
「あ、ペンギン!可愛い!」
ガラスに手を付け、わたしはペンギンに手を振ってみる。
ペンギンたちは既にお疲れなのか、それほど動き回っているような子は見当たらなかった。
「全然動いてねーなぁ」
「ペンギンも眠たい時間なんじゃない?ほらっ、寝顔も可愛いよ」
私はそう言うが、航は想像していたものとは違ったのか、何だか不満そうだった。
(さっきから不満そうな姿ばっかり···)
そんな表情を見せられては、こちらとしても心から楽しむことが出来ない。
(やっぱり、航とのクリスマスは断るべきだったかなぁ···)
そんな事が頭を過ぎった、その時だった―――
「なぁ、千衣」
ペンギンの水槽の前で航がわたしを呼び、そして、わたしの両手を掴み、航と向かい合せになる形になった。
航とは、こんな至近距離で居る事などほとんどない。
わたしは目のやり場に困り、俯いて手元に視線を落としていた。
「今日は···ありがとな。俺との時間、つくってくれて」
「まぁ···仕方なくね」
「それでも嬉しかったよ」
両手を繋ぎながら向かい合うわたしたちはあまりに不自然で、わたしは周りの視線を気にしてしまう。
しかし、見渡したところ他のお客さんたちは見当たらなかった。