鯨のうた
Story.7
あのクリスマスから、わたしは航と会話を交わしていない。
お互いに目を合わさなければ、挨拶さえも避けるようになっていた。
「竹浪さん、B社の杉田さんから今日の13時からの打ち合わせの件で、どうなっているんだ?と電話入ってますけど」
電話を取った中谷さんが航にそう伝える。
すると航は、ハッと表情を浮かべたあとで「やべっ!」と言ってデスクから立ち上がり、「すぐに向かいますって伝えて!」と言ってから、慌ててオフィスをあとにした。
(あの航が、打ち合わせを忘れてた···?)
航らしからぬミスにわたしはふとクリスマスの日の事を思い出す。
―――わたしは航を好きだなんて思った事なんて無い!
(あんな言い方をして、航を傷付けてしまったから···)
そんな後悔がわたしの頭の中を駆け巡る。
もっと違う言い方があったのかもしれない―――
しかし、咄嗟に出てしまったとはいえ、口に出してしまった言葉を取り消す事は出来ない。
(···謝った方がいいよね)
航の事も気掛かりだが、それと同時にわたしは雨龍課長の事も気になっていた。
わたしがクリスマスに航と出掛けたあの日から、雨龍課長とは会えていない。
お昼休憩に誘われる事もなければ、社内ですれ違う事すらなかった。
(わたし、嫌われちゃったかな···。わたし、何か間違った言動しちゃったのかな···)
自分が間違いを犯していないか、雨龍課長との時間をさかのぼり思い出してみる―――
クリスマスのお昼、わたしがご飯を作っていくべきだった?
"鯨のうた"を聴かせてもらえたのに、反応が薄かった?
色々思い出せば出すほど、どれもダメだったのではないかと思ってしまう。
今日は仕事納めの日。
わたしはある事を決心した。
(よし、今度はわたしから誘ってみよう!)